Ж-67 陰 陽 交 叉 ~Moonshine Struck~ ③
~§時代に惑乱された。兆がまた一、 泡沫に§~
~§累る亜茫を、 遍が貪る§~
逃げたなんて誰が言った?
もう戦わないなんて誰が決めた?
~§然れど忘る昧、 忘る昧§~
~§月影が如き、 汝の心象§~
全部オレのシナリオ通り、 巨大な魔物と出喰わした時の
仮想戦闘は、 寝ても覚めても異能で繰り返してたんだよ。
~§契りし睦が、 僕へ纏わる§~
『不 夜 ノ 旋 風』
無造作に拡散させるのではなく左腕だけに集束、
渦旋を描くソレをそのまま地面に叩きつける。
~§識りぬ月影は幽けき成れど§~
反動で生まれる爆発的推進力、
来た道を一瞬で駆け抜け「標的」がズームアップで迫る。
~§久遠に渇望う刹那は誰が為に§~
やっぱ鎧の 「継ぎ目」 を狙うべきか?
イヤ、 イケる――!
『穿牙ッッッッ!!!!』
異能 “エビル・クロー” による爪の硬質化、
だが通常の 「伸縮型」 と違いより肉厚に頑強に、
ソレにより斬れ味は落ちるが貫通力では遥かに勝る!
ヴォグュッッッッッッッ!!!!!!
『KYYYYYYYYYYYYYYYYYAHHHHHHHHHHHHH
―――――――――――――――ッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!』
目論見通り腰部周辺の甲冑がさしたる抵抗も無く砕け、
内部の魔肉に魔爪が抉り込まれるのをダイレクトに感じる。
通常の風刃で切り刻むのではなくその魔力を強襲の起爆剤に変え、
異能と掛け合わせて単体の破壊力に特化したのがこの魔導、
【不 夜 ノ 旋 風/穿牙】
人型相手には遣い辛いがこのような “巨大な” 魔物には
正しく打ってつけの術式。
ほれほれ暴れても無駄無駄、 おまえ「手」がねーじゃん、
右は盾だし左は蛇だし。 そんな風に創った神様を恨みなさいね
知らねーケド。
このままココに取り付いたまま内部の奥深くまで抉ってやるよ、
トンネル開通したら向こう側の相方と握手!
「お姫さまッ!」
そんなフザけて調子に乗ってた罰が当たったのか、
珍しいソフィアの叫びが聞こえた時はもう遅かった。
大地に大きく浮かび上がる魔方陣。
相方と “連携” 取ってたのはオレだけじゃなかった。
ヴァギイイイイイイィィィィィ!!!!!!!!!!!
「ギャアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
大地から通常の法則を無視して立ち昇る放電。
巨大な鎧着てるしオレのナイフも刺さってるから
効果は抜群だ!
発動に時間差もあるのに相方とバッティングもしなかったしね、
その代わり物の見事にオレに命中ったけど。
予期せぬ電気ショックに爪が外れて落下、
ボインッって一回地面で跳ねた後、
往年のバラエティみたいにゴロゴロと転がる。
あの効果音が面白いんだよね、 今ヤっちゃダメらしいけど。
案の定 「お姫さま!」 と慌てたソフィアがサーシャと一緒に駆け寄るが
片手をシュタッと上げて制する。
10:0でオレが悪ィし新しい魔導で調子乗ってたからね。
幸い界層主が 「避雷針」 代わりになったからダメージはさほどでもないよ、
ちょっとド〇フのコントみたいに汚れちゃいるがね。
その間に――。
グァギャギャギャギャギャギャ!!!!!!!!!!!!!!!
オレが撃ち込んだ楔にほぼ余す事無く立体機動の斬撃が撃ち込まれ、
帯電した楔が纏った甲冑ごと鋳型のように肉へ喰い込み
鎧に大きな亀裂が走る。
感電と激痛に拠る “ショック状態” 一人の英霊が巨大な界層主を
完全に空間へ縫い止める。
『霊・吼・覇・皇・儀……ッ!』
即座に大地へと屹立し、 その反動よりも速く別の力で
漆黒の外套が大きく捲き上がる。
闘氣と剣氣とあと一つ、 え? “覇氣” って云うの? アビス。
その三種の氣の集合体が刀身を面に構えた内部に呑み込まれていく。
ソレに拠って発する累乗波及効果。
内部で絡み合う魔氣がやがて光彩を放ち始める。
光氣刀身に充ち、 幾千の闇を討ち払わん――。
【月 虹ッッッッッッ!!!!!!】
英霊の放つ弐ノ太刀が、 虹霓と成ってオレの網膜を貫き抜けた。
NEXT PHANTASM…Ж
 




