Ж-8 曝 魔 鳴 動 ~Annihilation Break~ ②
「アビス!」
声に出さずオレは脳内に問いかける。
≪マ、主が、 初めてはっきりとワタシの名前を……!
THANKFUL PROSPE≫
あぁ~、 うるさい、 不幸属性まっしぐらだなこの妖精。
そんな事よりこの場合、 「二人有き」 の提案だよね?
一人だったらどうなるわけ?
オレへの打算とかいいから言ってみな?
≪そ、それは……≫
やっぱりか。 あと止めとけそのセリフ、
嫌われるキャラがよく使う言葉NO・1だぞ。
「アビス」
今度ははっきりと声に出す、 続く言葉は脳内だが。
「彼が一緒にいた方が有益なのは否定しない。
だが、 オレの為に 「利用」 しようとするのは止めろ。
嫌いなやり方だし、 自身の 「安全」 が絡めば
「裏切る」 可能性はゼロじゃない」
別に過去の恨み事を言いたいわけじゃないが、
友人だと想ってたヤツに手の平返された事は何度かある。
でも本当に恨んじゃいない。
「見捨てるか」 「虐められるか」 だったら、
大多数が前者を選ぶだろう、 オレだってそうだ。
人の善意を信じないわけじゃないが、
善意の押し付けは 「悪意と傲慢」 だという事くらい知っている。
一番悪いのはそーゆー 【最悪の選択】 を強いる、
屑共だってだけだけどね。
「ん!?」
思わず声が出た。
驚きでわけが解らなったのだ。
だっていきなり腕が、 毛むくじゃらの太い腕が首に巻きついたのだから。
振り向くと日に焼けた、 やたら人相の悪い男が下卑た笑みを浮かべていた。
「ぐふっ、 へっへっへぇ~、 帰りがけに、 良いモノ拾っちまったなぁ~」
ハァ!?
意味不明のまま視線を巡らすと一人ではない、
こいつを入れて計四人に囲まれている。
兵士の姿ではないがそれぞれ異なる武装をし、
だが嘲笑うような下卑た面は全員同じ。
アノ時みたいに――
一体どこから現れた?
近づく音も気配も無かったぞ、
ン!? 気配!?
≪CAUTION!≫
アビスの声が頭蓋に響くと同時に、
リュカが背後に飛び退り槍を構える。
出した結論はオレと同じか。
“隠密系” の魔導か異能、 或いはその重複!
RPGとかでよくある、 ザコが寄って来ないってアレ!
そういう意味じゃオレ達はこいつらより 「弱い」 のか?
ブッちゃけ生まれたばっかりだからな。
「キッキッキッ、 何だぁテメーら? ガキのクセに冒険者かぁ~?
それとも貴族のガキが夜な夜な乳繰り合ってんのかぁ~?」
盗賊ってかコソ泥っぽい、 貧相な顔立ちの小男が
身を乗り出すようにリュカを睨めつける。
オレを抱えてるのがゴリラならこいつはネズミだな。
ちなみに残りはヘビみたいな年増女と
なんかサルっぽいいけ好かないヤローだ。
ってかいきなり何なワケ? まぁ大体想像つくけどサ。
「あらあら、 随分良いローブ着てるのねぇ~?
何で裸足か知らないけどさ~」
おい勝手に触んな年増!
キモイ! マジキモイ!
化粧も衣装も全部キモイ!
「おいおい暴れんじゃねぇよお嬢ちゃん。
可愛がってやっからよぉ~」
あ、 やっぱソッチ系の話なのね?
無法地帯って基本、倫理もへったくれも無いからね。