Жー61 法印の精弓 ~Tumbling Dice~ ②
「シルヴィスの、 “法印弓矢” だな。
『ハイ・エルフ』 の中でも、 遣える者が少ないと言われる秘術だ。
種族独自の魔導を矢に纏わせ、 同じく独自の異能で射出する。
陰険なアノ女が好みそうな戦法だぜ」
「訊いてもないのによく喋るじゃん」
懐から石板を取り出そうとしていた
オレをギードが睨む。
「どうせ吐かされるなら無駄な事はしねーだけさ。
アノ女の腐れた 『種族主義』 には、
いい加減厭気が差してたからな」
「そんなイヤな女なわけ?」
「 “ハイ・エルフ” こそ至高の種族で、
他は全部端から見下してやがる。
だが自分より強いヤツには、
気持ち悪い位へりくだって媚びを売る。
その自覚がねえから余計にタチが悪ぃ。
そこのハーフ・エルフの娘なんぞ、
嫌悪どころか吐き気すら催すだろうよ。
「生物」 としてすら見做してねーからな」
向けられた視線の悪意にサーシャが身を震わせる。
あ、 ちょっと笑いやがったこのヤロー。
「おい! なんでガキに石板渡してんだよ!」
「このボタンを押すとね、 電撃が」
「懇切丁寧に説明してんじゃねえよ!」
「いずれにせよ、 そのハイ・エルフの女性が姿を現さない場合、
会敵した瞬間に危機へと陥るわけだな?
警戒すら出来ない援護というのは
二人同時に戦うよりも致死率が高い」
まるで霞のようにオレの手から石板を取り、
事も無げにそう告げる。
「 『法印弓術士』 だっけ?
その女の 「戦闘職」 は。 他の 『法術』 の種類は?
“ルーン文字” 使ってるんだからたった二種類ってわけじゃねーだろ?」