Жー60 退廃と浸蝕の轍 ~Asylum Garden~ ④
≪CAUTION!!≫
アビスの警告が聴こえた時にはもう射抜かれていた。
左肩の付け根から肩甲部を突き破って後方のフックが
骨肉に喰い込み引っ掛かる。
ガチで心臓狙ってきやがったな、
文字通り 「反撃の嚆矢」 ってワケか?
目立つ魔導だから “狙撃” の可能性は織り込み済みだったのと
些少とは云え身を逸らせたコト。
超長距離の 「射程」 にも救われたな、
沼の放つ瘴気も無関係じゃないか。
しかし敵ながら大した腕前だ。
互いの存在が目視出来ない場所なら
オレの姿など小枝ぐらいにしか映らないだろうに。
今回はスフィ公に感謝だな。
“触媒” は実際によく視えないと魔那が魔導に組み込めないし、
発動圏内を俯瞰出来なければ魔力の精度も落ちる。
オレ自身が明確に認識出来るくらい 【境界】 に近づいてたら、
おそらく「頭」 狙われてただろうな。
地表に衝突するまでこの間僅か0,7秒。
やっぱ使える 『思考超加速』
オレとの 「相性」 は一番かもしれん。
常時発動してるから熟練度も向上ってるだろうし、
そのうち 『進化』 とかすんじゃねーの? イヤ知らねーけど。
グラついた体勢をなんとか空中で立て直し
左脚を伸ばしながら右手を付いて着地。
皮肉にも矢が刺さったままなのが出血を留めた。
あ? 銀色の矢全体に “ᚱ” という光の文字が絡みついている。
オレらの世界にも在ったモノ、
『ルーン文字』 とか云うヤツだ。
流石に意味までは解んねーが
コレが超長距離の “狙撃” を可能とした異能と見て間違いない。
「スフィ公!」
即座に命じてローブの襟首を咥えさせ其処からの撤退を図る。
正直メチャクチャ痛ってぇが取り敢えずソレは後だ。
頼むからクソ速ぇだけで 「追加効果」 とか有ってくれるなよ、
今日は 「戦わない」 って約束なんだからな。
直後、 後方の森が爆散した。
さっきとは違う異能だ。 おそらく絡んでる文字も違うだろう。
矢を回収したいが叶わぬ願い、 なるべくジグザグに、
身を低く迂回した経路を走らせてるから
コレ以上の追撃は不可能だと想う。
スフィ公は素早いし明らかに 【境界】 の向こう側から
撃ってきたから、 今回はオレが魔導で目立ち過ぎただけ。
さってと、 帰ってギードちゃんに色々と聞かないとね♪
電撃罰ゲームをちらつかせればアッサリ吐くだろう。
その前に傷は治して服も修繕しとかねーとな。
相方にバレたらオレに雷が落ちるわ。
あぁ~、 どーでもいーけど泣くなオメーら!
全ッ然効かねーよこんなモン。
NEXT PHANTASM…Ж




