Жー59 反徒の独白 ~Lightning Plasma~ ③
「こいつ! 姫がいねぇからって
また何かしでかそうとしやがったのか!?
やっぱ鎖でふん縛っておこうぜ旦那!」
「そうだぜ兄貴! 敵のクソヤローに下手に出る必要なんぞねえ!」
遅れて武器を構えた人間と狼人の罵声が肌を打つ。
何故か少し安堵している自分がいた。
「奴隷」 の扱いってのは本来そーゆーモンだ。
「待て」
微かな強張りすらない森厳な声で、 英霊が俺の前に立つ。
「未だ断言は出来ぬが、 妹御の病、 治療出来るやもしれぬ」
「な――!」
反射的な怒りで拳を振り被る。
賢者の女がロッドを構えたが眼に入っただけだった。
文字通りの雷速で放たれた電撃が瞬間、 黒い外套で払われる。
どういうつもりだ!? 事態が認識出来ぬまま
拳は顔の寸前で止まった、 止められた、 のか?
「伴侶、 申し訳、」
「大事ない」
女を一瞥して微笑を浮かべる。
この状況でこんな声が出せるのか?
そう疑うほどに澄んだ声音だ。
「論拠は、 在る。 先に詫びておくが君の手紙は読ませてもらった。
その中に綴られていた 「症状」 が、
私の世界の 「或る病」 と酷似していた。
私だけでは確約出来ぬが、 友の魔導と物資さえ揃えば、
其の薬を造ること、 吝かでない巳もしれぬ」
「な――! い――! ぐ、 うぅぅ――ッ!」
怒りによる疑心と否定に様々な感情が入り混じり過ぎて
言葉が形にならない。
だが俺の中の答えは決まっていた。
そんなことあるわけがねえ。
あるわけがねえんだ!
「信じられぬのも無理はない。 困惑させたな?」
あくまで澄んだ声で、 ソイツはすまなそうに眉を顰める。
だからなんでそんな表情が出来るんだ?
この俺に――。




