Жー58 拉麺異世界紀 ~Timeless Storage~ ③
「姫! おかわり!」
「私も!」
「ファムも!」
「おひいさま、 お手伝い致します」
少しはこいつら見習え、 解り易いだろ?
サーシャも慌てないでゆっくり食べな。
おかわりたくさんあるから、 麺は “泡沫” で熟成させてるし、
調理器具一式も全部その中に詰まってる。
作り置きの材料も含めてね。
でも本当に便利だな、 『格納系』 の魔道具。
オレも魔導で遣えないかな?
ってなコトを考えていると “囁き” が聴こえてきた。
~§蜜月は、 静穏、 静穏、 終結を迎え添う§~
~§彩色鏤めた、 追憶に寄せて§~
麺を切り分けながら、 茹でながら、
スープの仕上げに細心の注意を払いながら
ゆっくりと 『詠唱』 を脳髄で噛み砕く。
構成される術式の中で何処を 【咒法】 で毀すか、
『創成者』 で再構成するか吟味する。
どうせなら魔道具の 「代用」 ではなく
オレの魔導だけの 【独自性】 が欲しいね。
あ、 相方 「替え玉」 ? 了解、 了解。
~§了しと云えども、 心づかぬ不逞が儘§~
~§覚せし既望、 星霜、 永劫§~
~§一途彼を想う、 其が鏡像すらも、 燦然故に――。§~
『揺 ラ メ ク 四 番 街 ノ 幻 影』
「おひいさま?」
すぐソコに在った筈のモノが消えている。
魔氣の流れでソフィアはすぐ覚るが口唇に手を当てておく。
へい相方 「替え玉」 お待ち。
そのまま土製の寸胴を長い棒で掻き回したり薬味の追加を刻んだりする。
5分くらいして 「姫ェ~」 と情けない声が漏れだした頃、
徐に近づいて指先を弾く。
「え!? 今、 どこから出したの?」
「魔道具、 は、 テーブルに置いたままだよな?」
「どうでもいいですニャ! いただきまふ! 熱っ!?」
はいはい、 三者三様の反応ありがとう。
いまここに出した丼は5分前に作ったヤツ。
室内は疎か外気にそのまま放置してれば
麺は伸びるしスープも冷めるが
今出来たてのように丼からは
ホカホカ湯気が上がってる。
コレが一体どーゆーコトか――。
「 “時識ラズ” か!?」
「 “時識ラズ”、 ですね」
魔導と異能の専門家が同時に声をあげた。
莫迦四人は、 ラーメンに夢中で聞いちゃいねー。
アビスから “泡沫” の概要聞いた時に知ったんだけどね。
高レベルの格納には、
中の時間が流れないのが在るって。
だからソレをオレの魔導で生み出してみた。
収納空間を 【咒法】 で毀す代わりに
流動時間を遅滞させて最終的には停止に追い込む。




