Ж-7 寄る辺無き者達 ~Unknown Unknown Unknown~
斯くして、 私は今生の生に幕を降ろし
この 『神創十二星界』 とやらに 「転生」 したらしい。
無論そのような突拍子もない話を、
いきなり 「はい、 そうですか」 と受け入れられる筈もなく
訳も解らぬまま声も出せないほど混乱したわけだが。
≪畏れながら申し上げます、 御屋形様≫
この脳裏に響く声、 “布都御魂” の進言により
辛うじて現状認識は出来ているといった次第だ。
正式名称を 「統合制御型自律機動幻精霊」 と云うらしく
この世界の、 瑞祥を司るという女神の遣いであるようだ。
『異邦聖贄召喚』 という禁忌の術は、
多大なる犠牲と世に災厄を齎すという
理由のもと本来封じられているのだが、
ソレは実質 「建て前」 のようなモノで、
他国に抜きん出る 『力』 を手にする事が出来るという膨大な利権のもと、
実際はその禁儀を執り行う者が後を絶たないらしい。
人間の底知れない悪意や欲望は、
喩え 『神』 で在っても制御するコトは不可能であるらしく、
故にその中の 「一柱」 が儀式そのものは阻止出来ないが、
身勝手に 「召喚」 され隷属される異界の者を憂い、
せめてその 「意志」 だけでも護ろうと
己の 「分身体」 を生み出し、 支援する存在として
対象者の魂魄に宿らせているのだそうだ。
≪魔皇種の娘と、 このまま同道なさるおつもりで御座いますか?≫
この世界に、 肉を持ちて転生するより前から響いていた声。
言葉遣いは思慮深く慇懃で好感が持てる。
私の事を 「御屋形様」 と呼称するのはどうかと思うが、
本名を教えても畏れ多いの一点張りなのでそのままにしている。
「つもり、とは?」
声には出さない、 だが脳裏で問いかけるだけで彼とは会話が出来る。
≪畏れながら、 御屋形様は、 偉大なる 『英霊種』
本来、 盲目なる民の蒙を開き、
その聖徳と畏怖に拠り敬仰を束ね、
総ての象顕と相為られるべき御方。
その御名に、 万一つも疵が付く由在らば、
この布都、 いよいよ以て申し開きが立ちませぬ≫
「フフッ、 私は、 そんな御大層な人間じゃないさ。
無論色々助けてくれた、 君の恩には報いたいとは想うが」
≪滅相も御座いませぬ!
我が御屋形様に献身を奉じるのは当然の務め。
然様な御心遣い、 在ってはならぬ事で御座いまする!≫