Жー56 魔皇の喚問 ~Demon Lord´s Query~
肩にスライムは乗ってない。
他の連中も付いてきたがったが
魔氣で脅して無理矢理押し込めた。
こーゆー手段を選ばない 「尋問」 というのは
オレ独りの方が遣り易い。
他のヤツがいるとその反応で孤独感や絶望感が
薄れちまうんだよ。
腕は上げた状態で鎖の雁字搦めにしてあるからオレに攻撃は出来ない。
万一しても今は万全の状態だから効かないしね。
もう傷は塞がってるけど敢えて顔の包帯は残してある。
自分で付けた傷だから 「報復」 で何をされるか解らないという
恐怖感を煽る為にね。
さて、 なんでコイツが生きて此処にいるか? だっけ?
簡単だよコレに入れて運んできたのさ。
徐にローブの内側に留めてあった
ブローチを外して見せつけるように振ってみせる。
ケース型よりも更に小さい魔道具 “泡沫”
元々コイツの持ち物だけど性能が冒険者共から
ブン奪ったモノより高性能だから今はオレが使わせてもらってる。
通常格納系の魔道具にも魔導にも生物は
生命の生きている魔氣と魔那が反発して入らないんだけど
(全身封縛とかして無理矢理捻じ込めば出来ないコトもないらしいが)
コイツの持ってた 『光 輝 齎 す 者』 特製とやらは
「戦闘不能」 になったヤツなら生きていても収納可能らしい。
スフィ公に呑み込んだ後、 咀嚼も消化もせずに吐き出してもらったら
気は失ってたけどまだ生きていた。
攻撃命令時、 出来れば 「生かして捕らえたい」 っていう
オレの思念が伝わったんだろうね、
異能 “千魔隷属” 経由で。
だから “泡沫” の中に押し込めて
相方のお説教の後、 使われてない納屋に縛って放置しておいた。
首にはソフィアから貰った 「隷属の首輪」 が取り付けてある。
使い方は簡単でソレを取り付けた者が魔氣を込めれば
その言葉に反応して首輪が締まったり内側から棘が飛び出したり
電撃が流れるモノもあるらしい。
当然首輪の魔力許容量を超える魔氣や魔那が在れば
破壊は可能らしいけど、 今の両脚が無い瀕死のコイツじゃ
敵わぬ願いでしょ。
しかしこの世界の 「人間」 ってのは頑丈だね。
オレらの世界じゃ四肢切断とかなったら
まず間違いなく出血多量で死ぬのに。
薬と包帯で最低限の止血は行ったけど
それを差し引いてもシブトイ。
まぁその御蔭でオレも助かるわけだけど。
「ほいっ」
“泡沫” から取り出したモノを魔導で支え無造作に放る。
ゴトン、 と鉄床でも落としたような重い響き。
氷漬けにした二本の脚。
残ったから魔導で凍らせて持ってきた。
何かに使えるかもって事実使えたし、
靴は良いモン履いてるっぽいから
後で分解らして量産するのも良いかもだし。




