Жー55 烙 印 惹 起 ~Eyes of Brand~ ②
その際残ったスフィンクスの処遇をどうするか?
というコトになったが流石に村の中までは連れていけないので
オレが挽いた血肉の 【境界】 以西に 「番犬」 代わりに放つコトにした。
アレだけの犠牲者と嚇しを掛ければ余程の莫迦でもない限り
当分 【境界】 先に足を踏み入れる者は
いないと想うが念には念を入れておく。
集落周辺の木々は樹高が高いから遠間から視えないだろうし
仮に視えたとしてもそれが魔獣スフィンクスじゃ余計に来ようとは
しないだろう。
ってなわけで別れ際、 何故かスフィ公がその巨大な眼に大粒の涙を浮かべて
嫌々ってなったが 「また来る」 と撫でてやったら比較的すんなり聞き入れた。
やっぱり知能があるんだな、 こっちに手まで振ってたよ。
想わず 「もう来ねえぞ!」 と叫んでからのダッシュは
ミウ初め周りに全力で止められたがね。
いやぁ~、 それにしてもなかなか波乱の一日だった。
ダメージ負って今は魔氣もスッカラカン、
顔は包帯で現在某綾〇スタイルになってるけど実りは多かったね。
利益と損益で考えたら採算は取れた方じゃないの?
新しい魔導も異能も手に入ったし。
そんなわけで片手で伸びをしながら
こりゃあ飯が美味そうだ、 と独り言ちる。
――そんなふうに考えていた時期がオレにもありました。
「……」
どうしてこうなった?
生命の危機を体験したからなのか、
酒も飲んでないのに妙にハイテンションで肩を叩きながら
帰還したオレ達を待っていたのは、
簡素な木のゲートに腕を組んで凭れ掛かる相方の姿だった。
夜で髪が金色なので、 最初元の世界の 『時を止める男』 と
オレが見間違えたのも無理ないと想う。
それくらいある種の威圧感と無言の畏怖が全身から発せられていた。
想わず何処ぞの赤い魔術師みたいに絶叫して逃げたくなったが
明日屠殺される牛を見るような冷たい視線で一瞥され
細い顎で 「来い」 と刳られるとソレに従う以外
術がなかった。
そのままトボトボと売られる仔牛のように連行され
爺ちゃんの家で今に至る。
オレ怪我人なのに全員正座。
命じられたわけではないが極限の緊張を孕む
ピリついた空気のなか自主的にそうなる。
ソフィアの治癒魔導も今はお預け状態だ。
永遠に続くかのような無音の時間、
ある種の 「拷問」 にこんなんあるって聞いた事がある。




