Жー51 魔 導 決 壊 ~After Effect~ ②
「クッ、 クハハハハハハハハハハハハハ!!
アァァァァァハハハハハハハハハハハハ!!」
オレじゃねーぞ、 ↑の嗤い声。
死骸の散乱する森の暗がりから、
一人の男が込み上げる喜悦を抑えられないという様子で
手を面に当てながら千切れた臓腑を踏み潰して現れた。
一目で解る異彩を放つ風貌、 オレにはすぐ解った、
こいつこそが 『敵』 その中の一人だと。
「その制服と紋章、 アナタが、 『光 輝 齎 す 者』 !?
アンタが、 森に魔物を放っていたの!?
どうして!? 一体何の為にッ!」
セリナが悲痛な言葉で問い質すが
イヤ、 オレは十中八九コイツらだと想ってたがね。
ソフィアから聞いた話と総合するに。
よく解らんが自衛団と警察が合体したみたいなモンなんだろ?
コイツら。
なら 「潜在的な悪」 で在るオレなんか恰好の標的だ。
殺しても感謝されこそすれ糾弾するヤツはいない。
“なにかあってからじゃ遅い” という大義名分も成り立つしな。
「あぁ~? 雑魚の冒険者如きが話掛けんじゃねぇよ。
俺が用があるのはそのローブの女にだけだ。
全くこうまでコトが巧く嵌ると想わず笑っちまうぜ!」
高貴と荘厳さを否応なく感じさせる白の外套《制服》とは逆に、
内装は細いタイが襟元に巻き付いた黒の礼服。
華奢な体躯と灰色の髪、 でもそのクロム・イエローの瞳だけが
ギラギラと凶暴に光っている。
『正義』 とは明らかに違う、 異質な存在感の異様な男。
「全部姫の言ってた通りか! 姫《魔皇》を誘き出す為に
無差別に “ハグレ” を放ち森に火を付けた!
クソヤローの元凶がテメ、 ぐぁっ!?」
鍛え込まれたカリムの身体が紙屑のように後方へ吹き飛んだ。
魔導じゃないが手に集束させた魔氣を無造作に飛ばしたらしい。
威力も有るが相当速ぇな、 弱ってるとはいえオレも反応出来なかったわ。
「屑が勝手に喋るな。 俺が訊いた事にだけバカみてーに
答えてろ。 オゥール……」
鈍い光沢のある手袋にいつのまにか乗せられていた結晶体。
三角錐を重ね合わせたような形状で宙に浮き
一度眩い光を放ったあと一斉に弾ける。
「……!」
「え!?」
「ニャア~!!」
死屍累々だが陽光に溢れていた森が、
途端に光を失ったように成った。
樹々も草葉も転がる石でさえも、
色彩を喪失し光を投射していないように視える。
さらに音、 樹々の梢やさざめき、 僅かな葉鳴りすら聴こえない、
それ以前に気流を感じない。
コレがソフィアの言ってた “結界” か?
オレの魔導でもこんなコトは出来ない。
今日はここまでです。




