Ж-46 名も無き子羊 ~Scapegoat~ ③
「もう一回言ってみろ?」
セリナとファムが仲裁に入るが耳に入らねー、
あ、 久々にキレてんな、 オレ。
「怒った、 か? でも、 俺達も、 同じ、 なんだぜ。
ソレ、 まで、 おまえが、 勝手に、 決め、 んじゃ、 ねぇよ、 ノエル。
幾ら、魔皇、だからっ、てよ」
こいつ、 ガチで死ぬのが怖くねーのか?
魔眼で脅し付けても効果が薄い。
今でも相当苦しいだろうに。
「チッ」
壁に叩き付けるようにして拘束を外す、
激しく咳き込んでるが無理に喋るからだ、
莫迦が。
「後から後悔しても遅いぜ。
警告はしたからな?」
フード越しに流し目で床に座り込んだそいつに告げる。
「ゲホッ、 この、 カリム様を、 見縊るなよ?
いずれ、 おまえの、 片腕になる男だぜ」
そう言って不敵な視線を返してくる褐色の男。
ンなモンになりてーのか? なってどーすんだ?
≪CAUTION! 主自身に御自覚は無いでしょうが、
【魔皇種源泉】 拠り派生する異能の 「副次効果」 と推察致します。
個体名、 “カリム・バルザック” に魅了の状態異常は見受けられませんが
上述に付随する精神徴候と判断して問題ないかと恐々謹言≫
アビスの声。
まぁいーや、 勝手にしろよ。
「左だけどな」
片手を振りながら背を向ける。
ホールの喧噪が収まって無いので人気はない、
莫迦共が、 精々今の内に騒いでろ。
こいつらが来ようが来るまいがヤるコトは変わらない。
「特別ミッション、 参加するぞ。
屑共の方から掛かってきやがった。 却って好都合。
こっちも 『逆』 に利用して一網打尽にしてやる」
「え? あ、 姫?」
「返事は!」
「は、 はい!」
「おおッ!」
「ですニャ!」
『戦術現魔・参(惨)』
光輝齎す者だかなんだか知らねーが、
魔皇に逆らったら一体どうなるか想い知らせてヤる。
文字通り、 厭と云う程な――。
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