Ж-46 名も無き子羊 ~Scapegoat~ ②
「嘘も信じりゃ 「事実」 になるんだよ。
その 『逆』 も然りだけどな。
仮に今ホールで 「それは嘘だ!」 って叫んだ処で
一体どうやってソレを 『証明』 する?
わざわざ隠れ集落まで案内して誤解を解くのか?
ソコまで莫迦ならオレがおまえを殺さなきゃいけなくなる」
自分でも驚く位落ち着いてる。
腹の中は煮え繰り返ってるんだが
怒りってのはある一点を超えると却って冷めちまうモノだからな。
御蔭でどうやって殺すかだけを冷静に考えるコトが出来る。
合理的に、 理性的に――。
「さて、 オレには無いがおまえらには選択肢がある。
まぁ実質一択だがオレと別れるか一緒に来るか。
ソフィアとガルフは理由話して無事に返すよ。
信用出来ねぇだろうがソコは利害的に信じてもらうしかない。
一応訊くが、 どうする? もう答えは出てるだろうがな」
「行くに決まってんだろ!」
「行くわ!」
「姫しゃまと一緒に行きますですニャ!」
重なった三つの声。
――ハァ?
だからなんでそうなる? 気は確かか?
ブッちゃけデメリットしかねぇし
「冒険者」 も続けられなくなるかもしれねぇんだぞ?
ってな事を噛み砕いて懇切丁寧に伝えたつもりだが翻意は示さない。
ヤベェ、 マジでどうしたらイイか本っ当に解らん。
幾ら魔皇でもこの展開は予想出来なかった。
莫迦に話は通じないっていうが正にコレがそうだ。
「今日村を出る時言っただろ?
罪も無いハーフ・エルフを虐げるようなヤツは赦せない、
その覚悟が在るヤツだけ付いて来いって。
もう忘れたのか?」
「イヤ、 言ったけどさ、 微妙に違ってっけど、
でも時と場合を選べっつーかこの状況じゃ、」
「しょうがないか?
サーシャが襲われてもそう言うんだな?」
――!
莫迦ってのは、 ったく。
理解出来ねぇコトは極論と感情論に挿げ替えるからタチが悪い。
即座に首元を掴み片手でカリムを持ち上げる、
見られたねーが見られても誤魔化しきくだろ?
異能か魔導の所為にすればいい。