Ж-46 名も無き子羊 ~Scapegoat~
大変申し訳ありません。【一話抜けて】ました。
今日の投稿で『埋め合わせ』するので何卒御容赦を。
恐慌が歓喜に変わる瞬間、 怯えが安堵に変わるのは快楽の一種だから余計にか。
もっと莫迦みたいに騒いでろ、 こちらの殺気を悟られずに済む。
本当は今すぐにでも、 此処に居るヤツら皆殺しにしたい気分だからな。
「ちょ、 待て、 オカシ」
感情的に反論しようとするカリムの腕を掴み
首を振って促す。
いい加減コレくらいは忖度出来るようになったか、
ダインのおっさんに一声かけたあと 「あ、 おい」 とか言われながら
広い施設の片隅、 視界は開けてるが誰も来ないような場所に移動する。
観葉植物以外魔氣も魔那も感じない、
盗聴系の異能、 道具も警戒するが
そんなピンポイントで仕掛けてないだろう。
オレが此処に居るなんてこいつら以外は知らないんだから。
「一体ぇどーゆー事だよ!? 無茶苦茶じゃねーかッ!
なんでアノ火事をハーフ・エルフが起こした事になってんだよ!
目撃者も証拠もねぇ! 第一そんな事する意味すら何もねぇ!
なのにどうして!」
「騒ぐな、 大体オレの言った通りだろ。
当たって欲しくなかったがな。
想像が足りてなかったわ、 屑野郎の低劣思考」
フードの上から頭ガリガリやった後
本題に入る、 掻き過ぎて血が滲んできやがった、
最高にハイッってやつとは真逆のテンションだけどな。
「人を動かすにも “理由” が必要だ。
金だけじゃ思い通りに動かねーし必死さにも欠ける。
当初の 『予定』 じゃこのギルドが在る駐屯地直前で
消し止めるつもりだったんだろう。
だがオレが余計なコトをしたばかりに
計画を前倒しにしてきやがった。
森が焼けてく中でハーフ・エルフを炙り出せれば僥倖、
ダメでも棲息エリアは絞れるって算段、
小賢しい 「二段構え」 ってヤツさ。
そして案の定、 莫迦共が偽情報に踊らされてやがる。
金と安心と恐怖と怒りで頭ン中掻き回されて半ば正気を失ってる。
ブッちゃけ “憂さ晴らし” が出来るなら誰でも良いって状態、
ソレが弱いハーフ・エルフなら尚更だ」
体の良いスケープゴート、 オレらの世界でも珍しくない。
セリナとファムが青い顔してる。
悪意に晒された事は有っても
「理解」 出来るかどうかはまた別の話だからな。
「落ち着いてる場合かよ姫!
急いで誤解を解かねぇと、 爺さんもサーシャも、」
「だから何でそうなるんだ?」
壁に凭れ掛かって腕を組んだまま言う。




