Ж-44 燻 る 残 火 ~Rusted Ashes~ ③
「なんで!?」
「メンドクサくなったんだろーよ、 単純に」
もう一度ハァ!? の後絶句する残念系イケメン。
オレもメンドイよ、 解り切った事おまえに説明するの。
「この徒っ広い森の中、 不確かな情報で探す手間を考えてみろ。
しかも 『神託』 ってのは必ず当たるワケじゃねーんだぞ。
(byアビスの異能説明)
だったらダメ元、 下手な鉄砲理論で莫迦なコト仕出かす奴が
現れても不思議じゃない。
森の中は無法地帯だからな。
バレなきゃ、 バレても罰せられないんじゃやる奴はヤる」
「だからってよ!」
「自分の視点外せっ言っただろ。
おまえが絶対にヤらない事でも、 笑いながらヤる奴はいる。
何の罪悪感も一切抱かずに。
屑に限っては常に最悪の事態を想定しろ。
奴等は必ずその想像の遥か上をいく」
そろそろいいか、 魔氣も結構回復してきた。
魔氣ってのはブッちゃけ生命力だから休めば自然回復する。
オレは魔皇だからそのサイクルが早い。
少しでも寝れればもうちょい回復したけどな。
異世界闘士の劣等生がいるからしょーがないか。
そう毒づきながら肩を叩いてヒラリと舞い降りる。
「取り敢えず、 今回は撒けたけど状況はかなり悪くなったって考えて良い。
オレが火を放った方向からソッチ側には来るなって
言ってるようなモンだから。 人海戦術とか組まれると非常にマズイ。
今頃、 火ィ放った莫迦の仲間がその 『依頼』 でも出してるってトコかな?
杞憂に終われば一番良いんだけど」
「え? あ、 あぁ、 だから、 森のギルドに?」
一番聡明そうなセリナでも理解と思考が噛み合ってねーな。
魔皇と人間じゃやっぱ地力が違い過ぎんのか。
まぁオレには 『思考超加速』 が有るからな。
「あ? そうだ、 なんならオレのコト “鎖” で縛るか?
何かに使えるかもってソフィアから “奴隷の首輪” 借りてたし
オレが 「裸足」 だって説明もつく。
2~3回なら蹴ってもいーぞ。
本気じゃなけりゃ大して効かねーし 「新顔」 って認識されずに済む。
名前もオイ、 で良いしな」
言いながら先頭をスタスタ歩いていると3人が凍りついたように止まっていた。
暫しの静寂の後 「頼むからそれだけは勘弁してくれ」 と土下座された。
――?
結構良い手だと想うんだがな。 ダメか?
なぁ? ミウ?
「ミュ~♪」
肩のスライムを指で突くと嬉しそうにその身を震わせた。
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