Ж-43 炎 劾 双 劫 ~W・Tyrant Fifth Flare~
山火事? イヤ、 森だから林野火災とかいうのか?
異世界でもフツーに在るんだこーゆーコト、
魔氣とか魔那とか精霊とか存在してるのに。
最も自然発生じゃないのは明白、
今、 眼の前で、 いきなり起こったんだから。
どっかの莫迦が炎熱系の魔導誤射って引き起こしたんじゃない、
明らかに何かを狙ったモノ、 ソレこそ誰かを炙り出す為、 とか。
生木は燃え難い筈だけど一度火が付けば
よく燃えるのは人間と一緒だな、
元の種火がよっぽど強かったのか?
宛らゆっくりと差し迫る赤い壁だ。
煙はまだ届かないけど熱気は感じるし劫々と燃え盛る音も耳に痛い、
魔皇の聴覚だと飛び立つ鳥や我先にと逃げ惑う小動物で
鼓膜が引っ掻かれるみたいだ、 当然魔物も燃えている。
「おい姫! 何ボサっとしてんだ! 森の “境界” まで逃げるぞ!」
「深淵の災害が他の星界まで漏れたっていうのは聞いた事がない!
多分 “入り口” 以外は歪みに阻まれる筈だわ!」
「幾ら姫しゃまが強くても無理ですニャ!
昨日のワイバーンでも消せないですニャア~!」
そうだな。
相方なら兎も角、 オレは頑無視する処だわ。
消防士じゃねーし森の自然も関係ねーし。
その方向が違ってりゃあな。
「オレ達はどっちから来た? このまま火が消えなかったらどうなる?」
裸足のまま、 その巨大な赤い壁へと一歩踏み出す。
突如響いた爆音と共にうねった火柱が噴き上がる。
燃焼促進剤でも合間に仕込んで置きやがったのか、
ガチで場所が解らない集落を森ごと焼き尽くすつもりだ。
昨日の “ハグレ” 放ったヤツ(仮説)とは手口が違う、
全くの別人かそれとも連携が取れてないのか、
何れにせよロクでもねーのは確かだ。