Ж-42 魔 皇 の 拡 声 ~Devil's Howling~ ③
「イヤなら別にやらんでもいい。
でもおまえらがオレの世界の 「戦い方」 を
もっと知りたいっていうからこーゆーカタチにしてるんだ。
教える以上実戦で運用出来なきゃ意味ないし
半端に覚えるくらいなら知らない方がマシ」
フードを被り直しメガホンを肩にポンポンやりながら三人の前を歩く。
「人間は、 必要に駆られないと本来出来る筈のコトもしなくなる。
“異能” や 『魔導』 が在るこの世界じゃ尚更。
今までの戦いを振り返ってみろ。
格下の雑魚相手にも異能使ってきたんじゃないの?
その必要も無いのに。 最後に異能使わなかったのはいつか覚えてるか?」
背越しにザワッとした感覚が伝わってくる、
「なんで解るの?」 ってな面してるんだろーなこいつら。
「ソレが 『壁』 になって戦力が頭打ち、
Bランクとやらに上がれなかったんじゃないの?
なまじソフィアが高位種の賢者でその魔導も強力だから
必死に訓練する必要も無かった。
その帰結が昨日の出来事。
相方が偶然近くに居なかったら5人全員で生きてるコトは無かった。
だから今は異世界生まれのクソ生意気な小娘に説教垂れられてるってワケ。
ドゥー・ユー・アンダスタン?」
背越しに片手をヒラヒラさせながらそう告げる。
カリムのぐぬぬ、 という声が聴こえるのがちょっと面白い。
まぁここまで懇切丁寧に説明する義理もないんだがね。
でもおまえら、 オレが “魔皇” って解っても、
大して驚きもしなかったよな?
ハーフ・エルフのコトも差別しなかったよな?
オレらの世界でもそーゆーヤツは珍しいんだよ。
差別されるのが当たり前の状況なら、 猶更。
自分に危害が加えられる可能性も高いわけだから、
そんなコトするヤツは莫迦だって嘲笑う屑もいる。
だから――。
徐にフードを外し振り返る。
「姫……」
「姫しゃま……」
「なんでそんな綺麗な笑顔が出来んだよ……
あんだけ罵詈雑言飛ばしておいてよ……」
呆気に取られてるけどオレ今微笑ってるのか?
なんかこいつら、 別の土地で出会ったヤツらっつーか、
他の国で出来た知り合いっつーか、
元の世界の感覚で云うとソレに近い感情が生まれる。
取り敢えず次の戦闘もガンガン駄目出しするから覚悟しとけよ。
翼竜のハグレ程度にビビってたら魔皇のツレは務まらねーからな。
あ、 今は微笑ってるって解る。
意外と自分のコトも解らねーみたいだな、
魔皇といえど。
グォッッッッグアアアアアアアァァァァァァァァァ――――――
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巨獣の唸り声のような轟音と共に猛烈な熱風が頬を叩き
朱に染まった陽光が視界で乱反射した。
魔物との遭遇より唐突で異能の発現より苛烈。
前方の森が燃えている。
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