Ж-42 魔 皇 の 拡 声 ~Devil's Howling~ ②
「姫! すまねぇ! 一匹抜けた!」
カリムの声が響く中オレは樹の枝まで跳躍してきてた魔獣の上に
座ったままの姿勢で軽くジャンプ。
どこぞの波紋使いにでもなった気分だが魔氣の放出と
樹の魔那の反発を利用すれば案外イケる。
限界まで飛んだ後に相手が跳躍すればどうなるかなんて
解らない辺りが所詮はエテ公だな。
持ってる武器を振るうコトも無いまま唖然とオレを見上げる面に
延ばした脚の爪を抉り込みそのまま踏み抜き蹴りの要領で
地面へと直下軌道で叩き落とす。
バグォッッッ!!!
陥没って程じゃないが抉れた地面の穴から、
紫の血が噴出する。疵口がエグイからその後も
壊れた水道管みたいに血液を乱雑に撒き散らす首無し胴体。
当然返り血がローブと顔にも掛かるが別段どーでもイイ、
ソレよりドン引きしてるお前らの面、
敵と一緒に硬直してるんじゃないよ。
だから 「能力」 頼み、 『精神』 が全然鍛えられてない、
大量生産されてるどっかの〇〇ラノベみてーとかオレに言われちゃうんだ、
コレを 「好機」 と視ないでどーする?
「はいペナルティ~、 戦闘終わったら全員腕立て100回の刑。
あとオレが一匹仕留めるごとに追加で50~」
血に染まった大地の上でメガホンをポンポンと叩きながらそう警告、
慌てた三人が速攻で相手に向き直る。
なんでコボルド共まで慌ててんのかは知らん。
おぉ~、 おぉ~、 罰を科すとさっきと動きが違う、 違う。
最初からそうやれ敵は待ってくれねーぞ
もし格上相手だったらどーすんだ?
追い詰められても助かるのはご都合主義で守られた
ラノベのヘタレ主人公だけだぞ。
ってなワケで腕立て開始~、
職業のハンデがあるからカリムの上に乗ってやる。
「こ、 この訓練、 何か意味があるの?
私スピード重視のスタイルなんだけど」
「ファ、 ファムは別に格闘士を目指してないですニャア~。
「転職」 の予定も無いですのニャア~」
あぁ、 うるさいな。 不利益が無かったら 【罰】 にならんだろ。
口じゃなくて手を動かせ、 そんで自分の身体の 「構造」 を再認識しろ。
もし 「武器」 を使えない状況に陥ったらどうするんだ?
おまえら異能もそうだけどモノにも頼り過ぎなんだよ。
ってなコトをカリムの背で胡坐をかきながらそう伝える。
なんでスピードが上がってのかは知らないが。