Ж-41 戦 術 現 魔・弐 ~Real Advanced~ ③
「解らない? だから異能は意識しないと発動しないんだよ。
だったら異能じゃない 「通常攻撃」、
いちいち次は上段だの右払いだのと考えて使うか?
相手や状況に合わせてほぼ無意識に動くだろうが。
『技』 ってのはそーゆーモンで修得に手間が掛かるから
その分 “強み” が在る。
でもこの世界の人間は異能が在るのが当たり前だから、
どうしてもソレ主体の戦闘傾向になるし
威力がデカイ上にお手軽だから余計にその比重が傾く。
結果戦闘の 『駆け引き』 なんてなくなるし
極論、 只の異能のブッ放し合いになる」
肩でミウがうんうんと頷いてるがイヤ解ってねーだろおまえ。
あとアビスと被ってるからな脳内で。
「いまいちよく解んねーな。
それと姫が敵の攻撃止めたのと、 何か関係あるのか?」
「大アリだよ。 オレらの世界に “異能” なんて
都合の良いモノは存在しなかったから、
だから相手の動きを読んだり封じたりする 『技術』 や 『技巧』 が発達した。
種族なんてのも人間以外はいないから筋力はどれだけ鍛えても基本一律。
世界最強の男でも同じ体格のヤツから直撃貰えば一発で倒される。
だから必然、 攻撃より回避、 防御が優先されるようになった。
戦場で何百人も殺した男が、
素人のナイフで刺し殺されたなんて話もあるくらい」
オレにとっては当たり前でも彼等にとっては異世界の話、
固唾を飲む音と場が緊張を孕む。
「だから相手の呼吸、 【攻撃予備動作】 を読むのなんて初歩の初歩。
さっきの莫迦は御丁寧に 「技名」 まで叫ぼうとしてた、 異能発動前に。
オレは魔皇で瞳は魔眼だからイヤでも情報が入って来るんだよ、
異能頼りのヤツは “隙だらけ” だって。
オレらの世界じゃリアルの戦闘で 「はぁ!」 なんて叫ぶ莫迦いないよ、
ガキのケンカかド素人でもないかぎり」
「じ、 じゃあ異能名は口に出すなって事?
そんな事、 今まで考えてもこなかった」
セリナが焦ったように冷や汗を飛ばすが
オレは片手を上げて遮る。