Ж-39 光 輝 齎 す 者 ~How are you? Bastard~ ②
「ワタシもこんな浅層に竜属の 『ハグレ』 が現れるのはオカシイと想いました。
そもそもその可能性が在るのなら、最初から 『深淵』 になど参りません。
明らかに目的はハーフ・エルフではない。
もっと強大な力と明確な意図を持った何者かが、
特定の人物を誘い出す為に放った、 と考える方が辻褄は合います。
偶々居合わせた 「冒険者」 等、 幾ら犠牲になっても構わないという
邪な思惑も感じますが」
「そーゆーコトが出来る異能者の心当たりは?」
「魔獣使い、 調教師というコトは無いでしょう。
仮に支配者だったとしても、 果たして “氷河翼竜”など自在に操れるか否か。
通常混乱、 洗脳、 傀儡状態に在る魔物は
その能力が減衰し意志も希薄となるのですが、
アノ時にそのような抑制は視られませんでした。
故に誰かが意図的に放った、 という表現が一番符号すると想われます」
「異能じゃない? だとすると、 “封具” ってヤツか――?」
「御存じなので?」
珍しく感情を露わにする彼女に軽く頷く。
「この世界に 『召喚』 されたその時に、 危うくソレに捕まりかけたよ。
モノホンは見てないけど、 相当な魔力を持つモノだってのは聞いてる」
ここでね、 と出番がなくていじけてる脳内のアビスちゃんをトントンする。
「でも、 そーとー貴重なモンらしいよね?
まぁピンキリあるんだろうけどさ。
高ランクの冒険者だったら持ってたりする?
その目的がいまいち解らんけど」
「はい、 ですが、 あぁ、 どうして理解らなかったのでしょう。
不覚です。 アナタと共に居て、 気づかない方がオカシイのに」
ロッドを手にしたまま細い首をふるふると振っている。
どーでもいーけど帽子似合うねこの娘。
『光 輝 齎 す 者』
少女の発した言葉に、 樹氷の葉張りが鳴いた。
≪CAUTION!≫
アビスうるさい、 後で聞くから今はソフィアと話させろ。