Ж-5 解き放たれしモノ ~Breathless Night Slider~ ②
「げ、 下賤者が、 無礼な……」
ふと耳に入った言葉、 無視しても良かったのだが
オレのこめかみの青筋ちゃんがピクッ、 と反応する。
リュカが半分放っておけという顔をするが
ここで空気読まないのがオレクオリティー。
「ねぇ?」
そう言いながら彼女との距離を詰める。
テンプレ通りに彼女は壁に向かって後退る。
「今日、 地下で、 何が行われてるか、 知ってる?」
一言、 一言、 噛み含めるように告げる。
眼は細まり口元には冷酷な微笑が浮かんでるのが自分でも解る。
豹変したオレに気圧され退く王女へ、 容赦せず更に詰め寄る。
逃げ場のなくなった背後へと手を突き出し
自分より一回りほど低い少女を見据える。
やた! 人生初の 「壁ドン」 だ!
意味違うけどやってやった、 やってやった。
「小さい子供が、 洒落にならない数で、 死んでるんだけど。
知ってたの? 知らなかったの? お姫様?」
「――ッ!」
あ、 口噤んで眼ぇ逸らしやがった。
こら完全に知ってやがったな。
浮かんだ表情が 「驚愕」 じゃなくて 「葛藤」 の時点で丸解り。
取り敢えず今考えてるのは、
「仕方がなかった」 「私の本心じゃない」 辺りか?
ソレで “水晶姫”? 笑わせるなよ。
「フ――ッ!」
魔皇モード全開で最高に侮蔑した嘲笑を向けた後
それ以上は何も言わずリュカの所に戻る。
これ以上責め立てて 「そ、それは!」 とか
偽善者特有の○○みたいな台詞聞きたくないし、
まぁ今日はこれ位にしといたらぁ。
どーでもいーけど子供が殺されてる時間に
優雅にお茶なんか飲んでるんじゃねー!
眼に入ったティーテーブルを半ば八つ当たり気味に蹴っ飛ばす。
繊細な造りの家具が高級そうなポットとカップと一緒に
ガラス張りのシェルフにブチ当たって諸共に砕け散る。
今ので絶対居場所がバレたな、
しゃーない、 腹括るか。




