Ж-35 牙 刃 鳴 り ~Ambivalent Conflict~ ②
「ちょっと止めてよ!
此処に居るって事は 「被害届」 は出てないって事だわ!
疑うのなら幾らでも調べてもらって良い!
疚しい事は何もしてないもの!」
「 “よって魔物の討伐は、 その事実を以て是とする”
ギルド協定-第7条-5項。
基本の前半部だから知ってる筈、 解ってやってるならタチが悪い」
「ガタガタうるせえんだ!! ザコパーティーが!!」
「この申請が通ったら、 私達がBランクに上がるから
ただソレを阻止したいだけ。
自分の実力が伴わないのを棚に上げて浅ましい事この上ない」
「テメエ!!」
「 “ギルド加盟の冒険者同士の私闘は、
如何なる理由であれ堅く此れを禁ずる。
約款を侵せし者は即座に其の資格を剥奪とする”
第1条-3項。
ソレすらも忘れたのなら疾っとと冒険者なんて辞めればいい。
序でに死ねばいい」
「ぐっ!」
見た目に反し、 存外好戦的で辛辣だな。
或いは仲間を侮辱されたのが余程腹に据え兼ねたか。
魔皇と気が合うやもしれぬな。
私の腕は離して貰えぬが。
「問答は終わったか? 為ればいい加減査定を始めて欲しいのだが?
余り長引くようなら品は別の所に持っていく」
そんな宛てなど無いのだが此処は流れに乗って往こう。
場所が場所だけに職員の質も良くないようだ、
元の世界でいう “ことなかれ” と云うヤツか。
情状は酌量するが義憤の情は禁じ得ぬ。
「私が仲間と共に討伐した難敵だ。
故に下賤な勘繰りを弄すること、 罷り成らぬ。
文句があるならまとめて相手になるぞ?
私は冒険者ではないのでな」
云うと同時に闘氣を解放する。
殺傷ではなく威圧を目的とした為
破壊は無いが石造りの空間を揺るがす程度なら十全。
周囲に漂う黄金の気流が詰め寄っていた冒険者達の身体に纏わるが
今は何の実感も無いで在ろう?
ほんの少し殺威を込めるだけで身を千切る刃と化すがな。