Ж-35 牙 刃 鳴 り ~Ambivalent Conflict~
空間を埋め尽くす蒼い冷気。
誇張ではなく本当に体感温度は下がっているし
剥き出しの石畳には霜が降りている。
大したモノだ氷河の孤竜よ、
最後は業火に包まれて絶命した筈だが
焼灼の苛みが然程視られないコトから
君の矜持を感じるよ。
下がった温度とは裏腹に周囲は大変な騒ぎ様だ。
自身の査定も忘れて無数の冒険者達が群がってくる。
「おいおい嘘だろ!?」
「 “フィフス・フェイス” なんてCランの、 良くて中位だろ?
ハイブリのソフィア以外はザコだらけじゃねーか!」
「どんな汚ねー手使ったらワイバーンなんて伐れんだよ!?
B級の 『クラン』 でも全滅するレベルだぜ!」
「ハイエナに決まってるさ!
そうじゃなきゃザコパーティーに伐れる代モンじゃねー!」
……散々な云われ様だな。
冒険者とは斯くも口が悪いのか。
血腥い戦闘を日々の生業としていれば
気性が荒れるのはある種無理からぬ、 のか?
半分は事実であるためセリナ嬢を初め
パーティメンバーは随分と萎縮してしまっているようだ。
カリムという人間の青年は口元を軋らせているが
私が秘匿を要請したため反論出来ぬらしい。
再度拘束される腕、 猫の少女は怯えたようにしがみ付き
白尽くめの少女は気丈に周囲を睨め付ける、
怒声が増したように感じるのは私の気の所為か?
「おい獣人、 素直に言えよ。
どうせどっかのAランが伐ったヤツを
セコイ異能でチョロマカして来たんだろ?
調べりゃすぐ解んだぞ! あぁ!」
詰問が恫喝染みてきたな、
止めぬ者が居ぬのなら必然の流れか。
職員は一体何をやっている?
彼女らも討伐に疑問を抱いているからか?
だからといって――。