Ж-34 至 宝 の 一 玉 ~Primal One~ ④
布都が小声で零しているがそういう意味で言ったのではないぞ?
話がまとまったのか分厚い金属製の扉が開く。
防毒対策か? 魔導が込めてあるため女性の細腕でも開くようだ。
強い血の匂い、 死の匂いが鼻腔を付く、
バラバラにされた魔物の死骸がある種一定の機能性を持って
広い空間に並べられていた。
バインダーを手にした査定役は女性が多いが、
其れとは別途に大仰な解体機具を持った屈強な男達がいる。
部分、 部分をバラ売りも出来るのか。
一考の余地は有るが果たして、
魔皇の吸収用に一部持ち帰るか?
彼なら直に食したいと言い兼ねないが。
「では査定を行います。 討伐した魔物をどうぞ」
所持しているのは私なので剥き出しの石板が敷き詰められた床を歩み寄る、
そろそろ離れてもらえるか? “泡沫” が出せぬ上に周囲の視線が痛いのだ。
どうやらこの二人は冒険者の間では 「別の意味」 で注目を集めているらしい。
容姿から判断すれば妥当な見解か。
革の表面に刻まれた魔物の装飾に指を当て魔氣を込める。
留め金が音を立てて弾け中身が体積を無視して流出する。
亡骸から漏れる巨大な冷気、
係員が絶句し周囲からも驚愕の声が上がる。
両脇に来た二人が胸を反らし、 残りの三人はしきりに恐縮している。
意図せず口元に浮かんだ微笑。
迂闊にもこの時私は気づいていなかった、
周囲の喧噪その中に紛れた、 姦邪なる視線を。
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