Ж-24 布 都 御 魂 ~Ancient Soul~ ②
幸い、 現況の処、 御屋形様の御成長は堅調に進んでおられる。
呪われし魔王種属とは違い、 英霊種は神々の 『恩恵』 を一身に受けられる存在。
戦に勝利する、 苦境を乗り越える、 仁徳により他者を救う。
様々な功績を成す事により、 与えられる神々の魔氣、
其れを効率的且つ細分に精練し、
御屋形様に相応しき御力へと昇華させるのも我の役目と為る。
魔皇と英霊とでは、 其処に隔絶とした相異が生ずる。
御屋形様は武功を挙げれば挙げるほど其の尊き御力を増してゆかれるが、
魔皇ノエルは幾ら戦っても其れだけでは
微塵も魔力は向上ってはゆかない。
然し乍ら、 敵も然るモノ。
神々の恩恵が受けられぬ事を逆手に、
対象から直接魔氣と魔那を奪い取る術を獲得してしまった。
其の影響に拠り、 御屋形様の成長速度も然る事ながら
魔皇ノエルも其れに劣らぬ事態になっている。
近接戦闘ならば、 御屋形様の一撃に拠り
彼奴が魔導を行使する遥か以前、
其の首が飛んでいるであろう。
だが距離を奪られたなら、 或いは配下の者を差し向けられたのなら、
彼奴の 『原初魔導』 の驚異は御屋形様ですら危ういやもしれぬ。
……同属アビスも全く余計な真似を、 万物の調和を第一義とするならば、
魔皇など生長させるべきではない、
いざ 【魔星】 に目醒めたのなら、
その災禍を被るのは我が御屋形様やも識れぬのに。
矢張り、 後の危局を忌避出来るのは
現状、 我だけで在るようだ。
御屋形様の大いなる慈悲は其れ故に魔皇種にまで及んでしまう、
其が英霊種の宿命で在るならば、 天魔波旬と化すべきは我。
喩え六道の獄に堕ちようとも、 御屋形様だけは御護りする。
時折彼奴が我に向ける視線、 おそらくは我の思惑にも勘付いているのであろう。
望む処だ、 我の眼の黒いうちは、
貴様の恣に動くこと罷り成らぬと識るが良い。
魔皇の魔那と魔氣の蠢動が伝える、
御屋形様とすれ違う刹那、
我にしか解らぬ声と視線で――
「おまえ? アビスちゃんのコト好きだろ?」
……絶対赦さぬ。 必ず滅す――!
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