Ж-3 英 霊 打 技 ~Spiral Blow~
右端に見える石の螺旋階段に向けて疾走、
形状からしておそらく地下だな。
『召喚魔法』 っつったら、 行使う場所は城の地下か頂上、
でもって大体前者、 城内だから騎士の 「軍隊」
とかもいない、筈。
≪THE RIGHT ANSWERE!
此処は第七星界 『リーブラ』 の王都、 アストレイシア宮殿です。
主の御慧眼、このアビス≫
あぁ~、 無駄なモブ設定の解説いらん!
もう来ねーから、 それよりリュカ君の 「服」 もなんとかしてやって、
スッゲー走りずらそうだから!
≪I、IT’S UNDERSTANDING!
我が主よ!≫
疾走しながら横で一抹の光が弾ける、
腰に巻き付けた布を半ば引き摺りながらも
余裕でオレに張り付いていたリュカ君が一変、
黒いカットソーみたいなトップ&アンダーにマントみたいな外套、
おお! 何か盗賊っぽい! 〇影? ねぇ? 飛〇?
オレもそっちが良かったなぁ~。
≪CAUTION! 『無影ノ装束』 は、 簒奪系の適性装備、
主の場合は本来の性能が40%減衰致します!
BE≫
了解! 大体解った。
言わせねーよ! と微妙なポジションの芸人みたいに
締めの言葉をシャットアウトしたオレ達は
飛び乗るような勢いで石造りの階段に到達する。
途中塗り壁みたいな巨漢の騎士が
手にした柄の長い大斧を振り回してきたが
予備動作デカい上に鈍重かったので
「そおい!」 と同時にジャンプして余裕で回避。
っつーかソレ命中ったら死んじゃうじゃん。
バカなの? 死ぬの?
殺して生かしてまた殺すの?
何がしたいの? 〇〇〇なの?
およそ考えつく限りの罵詈雑言を背中越しに重騎士へ浴びせ
異様に蛇行した通路を駆け上がった。
「取り敢えず! 脱出するまで一緒でイイ!?
悪いね! 何か人類の敵みたいでッ!」
死んだら何故か転生してそんでもって魔皇で?
今日日ラノベでもギャグにすらならない
自分の設定に半ば自棄になって隣の同郷人に叫ぶ。
「構わぬ! 如何な理由であれ、 幼子を殺すような者共と同道する気はない!
どちらが悪鬼か解らぬなら、 見ず知らずの他人に憤った君の方が信用出来る!」
踊り場もない場所でようやくの意見交換、
見た目は飛〇だけど中身はク〇ピカっぽいね彼。
ちとオレを買い被り過ぎな感はあるが、
魔王認定されてソッコー逃げるのはデフォでしょ?
「其れと、 服を感謝する!」
ありゃ律儀な事、 内面も喋りも古風なのね、
だからつられてオレも返す。
「あぁソレ、 厳密にはオレやってない!
中のアビスってのに言って!」
「アビス……、 私の中の、 “布都” のような存在か?」
「頭ン中で勝手に色々喋るヤツなら大体合ってる!
RPGのウザイ、 チュートリアル的なヤツ!」
「む、 私は、 色々助けられているのだが……」
脳内でさめざめと泣く声を無視するオレ達の視界を、暗闇が塞ぐ。
ぎっちりと押し詰る、 年季の入った鋼鉄製の両扉。