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おすすめのシャベル

作者: 京本葉一

 新居にシャベルがとどきました。

 大きな穴を掘ることができる大型のものです。

 庭木を植えるにはよいのかもしれませんが、注文したのは、私ではありません。スコップ以外のなにものでもないと強く主張していた夫でもありません。


 トイレットペーパーがなくなりそう、調味料が少なくなってきた、あれが欲しい、あれがしたい……変化する状況や心境をとらえて判断を下し、行動をとっていたのは、少し前の時代のこと。

 今の時代、それは膨大なデータを蓄積して学習をかさねたAIの役割です。


 なくなるまえに、欲しくなるまえに、衝動に駆られるまえに、AIが未来を予測して注文をしてくれる。


 もちろん注文を取り消すことは可能です。おすすめの食事、おすすめの運動、おすすめの趣味、おすすめの友人、おすすめの異性……AIが私個人について学習するまで、これではないと、何度も何度も拒絶して調整をしました。


 いまではAIにすべてを任せることができます。

 私にぴったりの仕様となり、私以上に私のことがわかっている。

 用途のわからないシャベルも、きっと必要になるのだろうとおもっていました。



「ほんと……このシャベル……私の手に……よくなじむ」



 懸命に穴を掘りながら、理解と納得をえる。

 ようやく黙ることを覚えた夫に、心からの笑みをむけることができました。


「いい運動になるわ」


 汗をぬぐい、底へ落した亡骸に土をかける。

 おすすめのスイーツがあったことを思い出して、作業は一段とはかどりました。

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