第53話「姪っ子を犬小屋に連れて──……」
「かくかくしかじか」
「いや、かくかくしかじか───じゃわかんないから」
わかれや!!
演出やろが!!
「あーもー! とにかく、これはモンスターの足!! 人間(?)じゃないから安心しろ!」
「いや、一個も安心できる要素なくない? なんでモンスターの足が叔父さんチに転がってるの?」
おっふ……正論だ。
ポンタが咥えた足を取りあげて説明をし───『ガルルルル』……取り上げて説明をしようと───『ガルルルゥ!!』……。
『ガルルゥゥウ♪』
「…………って、放せよ、ポンタぁぁあ!」
『わんわんおッ♪』
なにが『わんわんおッ♪』じゃ!!
目がさぁ、「投げて投げて!」っていってんの丸わかりやっちゅうねん!!
……つーかね、庭で「生の足」を投げる飼い主がどこにおんねーーーーん!
『わふわふッ♪』
「あーもう、うっせぇ! ほらぁ!」
投げると分かった途端に放しやがるし──────って、生の足投げてる飼い主おるがな!!
あああああ!
今ッ、ここにッ、「庭で生足投げる飼い主」が爆誕してもうたがなぁぁああ!
もぉぉぉおおおおおおおおおお!!
「──────……で?」
「はい。ポンタ君がですね……なんか、夜な夜な狩ってくるんですよ」
「何を?」
「モンスターを」
「どこで?」
「犬小屋で」
「なんで?」
「遊び感覚で?」
「いつ?」
「夜な夜な──────……」
ぴっぴっぷー。
「え~っと、黄色い救急車、黄色い救急車っと───」
「スタァッァァアアプ!! STOP恵美さぁん!!」
毎度のことだけど、ワンクッション!!
ワンクッション置いて恵美さぁぁあん!!
「YOUはなんでノータイムなの?! 叔父さん、ついていけないよ!?」
「そりゃ、叔父さんだからねー、あ、これかー」
だーかーらー!
黄色い救急車呼ぶな!!
あと、あれは都市伝説だからぁぁあ!!
&、叔父さんとオジサンを混同すなっ!!
おれは叔父さんだけど、まだオジサンじゃねー!!
これでも、まだまだ若いつもり──────……!
「いやいや、アラサーは中年だよぉ」
「シャラップ! JK!! ちょ~っと、若いからっていい気になってるとす~ぐにオバさんになる───」
ガラッ
『誰がオバサンですかーーー! 引っ越しぃぃい♪』
やかましいわ!!
どんだけ、地獄耳やねん、近所のオバちゃんはぁ!
あと、アンタ関係ないやろ!!
「あーもぅ! とにかく、本当なんだって───ほら、この前、自衛隊とか警察が家にいっぱい来たじゃん?」
「あーあったねー。やっぱり猟奇殺人でもしてた───」
してねぇわ!!
するわけあるか!!
YOUはどんだけ、身内を殺人鬼にしたいのよ?!
しかも、警察だけじゃなくて自衛隊が来るレベルの殺人鬼って、もはや! 怪獣クラスだっつーーーーの!
「いやぁ、そいうこともあるのかと……」
「ねぇわ!! ねぇっつーーーーの!」
自衛隊がそんなホイホイ出動するわけねーだろうが!
俺もこの前、人生初だよ、家に自衛隊に踏み込まれたのって!……まぁ、警察に踏み込まれたのも初めてだけどさぁ、ごにょごにょ。
「じゃーどういうこと? どうやってモンスターがぁ?」
うわ……めっちゃ疑ってる。目が全然信じてねー。
いっそ、じつは殺人鬼でしたーって言った方がすんなり信じそうだ……。
「何度でも言うけど、ポンタがぁ!!」
「ポンタがぁ~?」
なでりこなでりこ
『わふっ?』
恵美の膝の上で大人しく撫でられているポンタ。
うぉ、すげぇ……恵美のオパイがポンタの上にのって形がつぶれて───……。
「警察呼ぶよ?」
「さーせん……って、話が飛ぶから!!」
「姪っ子の胸ジロジロみるからでしょ?」
うるせぇよ!!
男は見ちゃうんだよ!!! 姪っ子だろうが何だろうが、巨乳は宇宙なんだよ!!!
「で───」
「あ、はい。えーっと……、ほら! こ、この前、お前も食ったろ? オーク肉」
恵美さんが都合50~100kgは持ち帰ったあれだよあれ!!
「あ、あー……そういえば、あったね。まだあるの? 食べたい」
食べたい。じゃねーわ!!
ったく……。
「いや、オークは全部食べた」
「………………オークは?」
じーざす。
また失言したぜ……。
「あー……。わかったよ」
……こりゃ、見せた方が早そうだな。
「ん? もしかしてオーク以外にもあるの、お肉」
『お肉』じゃねーよ!
まぁ、肉には違いないけど……。
「そうだよ。オークはないけど───」
ごぱっ
冷蔵庫を開けるとそこには、
「コイツが一杯ある」
「うわ、ぐっろー!! しかも、黒ッ! ナニ、この肉ぅ?!」
ドラゴンでーす。
「食ってみるか?」
「食う」
早いな、おい!!
人の事を猟奇殺人鬼扱いしておいて食うのぉぉお?!
じゅーーー
上手に焼いてみましたー。
「うわっ、硬ぁーーーぃ! なにこれ?」
「だから、ドラゴン肉だって、あとは、コカトリスとかもあるけど?」
ガルムとキメラは食うとこなさそうだし、コンポスターに突っ込んだ。
まずそうだし、なんか倫理的にちょっと……。
だって、でっかい犬とかライオンだもん───。
「コカ……なにいっての??───うッわ、これまッずいねー」
ぺっぺっ、と人んチの皿に半端にかぶりついたドラゴン肉を吐き出す恵美。
「ちょ! おま!……き、きちゃないなー。吐くにしてももうちょっと───」
いや、言うまい───。
「ま、まぁ、分かっただろ? 肉が証拠だ、証拠ー」
「いやいや、料理がヘタなだけでしょ、叔父さんがー」
むぅ……。
むかつく!!!
こいつ、むかつくぅ!!
このほかにも、ショウガとニンニクを入れて臭みを消しつつじっくり煮込んだドラゴン肉もあるんだけど、恵美にはやらん!!
電気の圧力釜でお酒と香草で柔らかくしたドラゴン肉もあるけど、こいつには絶対やらねー!
「なら、これならどうだー!」
ガラガラガラ!
窓を全開、庭をみせてくれるわっ!!
「ぶわ! くっさ!! 庭くっさぁぁあ!」
恵美が思わず目に涙を浮かべるほど。
絶賛腐敗中のそれ! 上からビニールシート被せて、遠目には何があるかわからないように偽装はしたけど、家の中からならよく見えるだろう。
そう──────『デカすぎて埋まり切らなかったドラゴンの頭ぁ~♪』某アニメ風
「うわ、くっさぁっぁあああ!」
おろろろろろ
「はっはっは! ドラゴン、討ち取ったり~♪───ポンタがね」
「討ち取ったりー! じゃないわよ、おぇぇっぇええ」
はっはっは。
臭いのには慣れたもん勝ちさねー。
しばらく恵美さんは、庭にむかってげーげーやってましたとさー。
「……やってましたとさー……じゃないわよ! ちょっとこれぇっぇええ!」
ハンカチで口元をおさえつつ、鼻にティッシュを突っ込んだ恵美が高橋に胸倉をつかんで庭に向かう窓に押し付けた、
おっふ、恵美さん……オパイの圧力が───。
「そんなええから、あれを説明しなさいよーーーーーーー!」
──ドラゴンやないかーーーーーーーーーーーーーい!!
いや、だから……。
「だから、そういってんじゃん……。ちなみにあれとってきたのもポンタだぞ」
「うっそぉぉお! うわ、また臭くなってきたッ」
ぴしゃ!
慌てて窓を閉める恵美。
家の中にも匂いが充満してしまったが、開けっ放しよりましだ。
「おえぇぇ……。これ、保健所よんだほうが……」
「呼べると思うか?」
…………恵美さん、ジト目でちょっと悩んでる。
「無理かなー。そもそも、なんて言って呼んでいいのか私にも見当つかないわ」
「だよなー」
まぁ、適当に腐敗物が───みたいに呼んでもいいのかもしれないけど、保健所だってこんなもんの処理したことないだろう。
下手すりゃ、また警察とか自衛隊のお世話になりかねん……。
「どーりで前から家が臭いと思ったら───……じゃーあのオーク肉も?」
「そうだって言ってるんだろ」
……じー。
「そんな目で見られてもなー……実物、見るか?」
「え?」
ドラゴンの首を見せてちょ~~っと納得した恵美さん。
ここはいっそのこと、犬小屋ダンジョンに実物をみせたほうがいいだろう。
元々、ダンジョン管理局には通報済みだしね。
隠しているのはモンスター素材であって、ダンジョンそのものではない。
というわけで───……。
「これが、そうだ」
「これがそうなの?!」
うん。
初見ではそう思うよね……俺も思ったし───。
悪臭漂う庭の隅にそれはあった。
無敵の強度を誇る──
入口部:高さ45cm、幅35cm
材質:木製。築10年。
───通称:ポンタの家
「……犬小屋だね」
「……犬小屋だ」
『わんわんお♪』




