第38話「その名はドラゴン」
「はぁ……ひどい目にあったぜ」
残暑厳しい季節。外を歩くだけで汗だくになってしまったが、日の高いうちから家に帰れるだけありがたい。
……まぁ、無職だからなんですけどね!!
「ただいまー、ポンタ」
『わふわふ♪』
庭の方からポンタの声。
これは、あれだ───何か捕って来た時の声だな。テンションでわかるようになってきた。
───このころになると、高橋もポンタが何を犬小屋から獲ってくるのかちょっと楽しみになりつつあった。
あれほど禁止禁止と言っていたのも完全撤回。
……だって、お肉とお金になるんだもん、げへへ。
俗物根性丸出しだが、人間こんなもんですよ。
とりあえず汗だくで気持ち悪いから、まずは水シャワー。
……あ、茶ぁぶかっけたあと、恵美が頭を洗っていったせいか、ちょっと女の子にいい匂いがする。
うん……嗅ぎたくて嗅いでいるんじゃないよ? ぼかぁ、そんな大変なヘンタイじゃないよ?……うん。
その後、水シャワーでさっぱりした後、ビール片手に庭に顔を出す高橋。
『わふッ♪』
お、ポンタくん、大喜びで駆け寄ってきますよ! ういやつよの~。
さー、ポンタくんや、ご主人さまは飲むぞー!
『わふわふッ♪』
昼間からビールで上機嫌の高橋に釣られてポンタも尻尾ブンブン!!
(うんうん、今日もポンタは元気だな──)
『へっへっへ……♪』
舌を出して、超ご満悦のポンタの顔にホッコリ。
よしよし、それじゃー今日の君の獲物を確認させてもらいますかね。
オークかな?
それともマンドラゴラ?
それとも、新種のモンスターかな?!
……カシュ!!
日も高いうちからビール開封!!
「さーて、ろくでもない日に、かんぱー……────────どぅおわぁっぁああああああああああああ!!!」
めっしゃぁぁ!! と、勢い余ってビールの缶を握りつぶしてしまった高橋。
だだだだだだだ、
だ、だって……!
だってぇぇぇええ!!
「おまッ?! そ、そ、そ、そ、そそそれ!!」
ど、ど、ど、ど───……!
「ドドド、ドラゴンやないかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
『わふッ♪』
『わふッ♪』じぇねぇわ! でっか!!
つーか、デェェッェエエッカぁぁぁあああ!!
「これ、でッッッッかぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
どで~~~ん、と庭に鎮座おすまし追わすのは、深紅の体躯をした巨大なドラゴン!!
いや、もう。初めて見たけど、これはどうみて───まごうことなきドラゴン!!!
巨大な顎。
美しい光沢をもつ頑丈な鱗。
鉄をも貫く鋭き爪と弾力のある被膜。
そして、真っ赤な瞳と爬虫類を思わせる面立ちに凶悪な角ぉぉぉおおおお───って、
ぽ、
ポンタくんや。
「こ、こここ、これ獲ってきたのぉぉおお?!」
『わふわふッ♪』
……ま~~じぇ?!
ちょ、ちょっとぉ。
ほ、ほんま───その犬小屋の中どーーーーーーーなってんの?!
……え?
な、中に、ドラゴンおるん?!
やっばくねーーーーーか、それぇ?!
あとさー……。
「……これ、どーやって処分したらいいんだよ!!!」
『わふ、わふッ♪』




