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犬小屋ダンジョン  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ


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第29話「国連ダンジョン研究室」

※ ニューヨーク 国連のダンジョン研究室 ※


マンマミーア(なんてことなの)!!」


 再びのアメリカ。

 ニューヨーク───国連ダンジョン研究所にて、再び送信されてきたメールに仰天するキャロル。


 そこに映し出されていた新種は、まさに脅威の生物であった。


「こ、こ、こ、こんなんのって」


 ビクンビクンとちょっとやばいくらいに痙攣するソバカスの才女。

 おー胸が揺れとる揺れとる……。


「ど、どうしたのよキャロル?! ちょっとキモいわよ。……あと、すごくキモイわよ?」

「───うっさい、一言多いのよジェシー! セクシーといいなさい! セクシーとぉ!」


 憤怒の表情でパソコンから顔をあげるが、その表情を長くはもたず再び恍惚としたものに……。


「それよりみてよこれ! また新種よ、新種!」


 そう。

 つい先日、ここダンジョン研究所に送られてきた4体のモンスターはやはり紛れもなく新種であった。


 ……しかも、そのうちの一体は、なんとユニークモンスターと認定。


 メール送信者より、名付の権利を一任されていたため、キャロルはこれ幸いとばかりなや、早速名付け。


 それぞれ、

 『クリムゾンゴブリン』『ブラッドオーク』『ノーブルオーク』

 そして、ユニークモンスターは、『オーガジェネラル』と名付けられた。


「え、えぇー? う、嘘でしょ~? この前、4件もあったばかりじゃん」


 懐疑的なジェシー。

 まぁ、これが普通の反応だ。なにせ、ここ最近は新種なんて見たこともないのだから……。


「いーえ、間違いなく新種よ。見なさいよ、これ」


 とんとん!


 指差すのは、PCのメールに添付されている解体前のモンスターのデータ。

 そこに映し出されているホワイトキャロット(白ニンジン)のお化けのような奴。


「は??……これって、マンドラゴラじゃん? これが新種ぅ?」


 「はんw」と、小ばかにした顔で笑うジェシー。


 たしかに珍しいといえば珍しい魔物だ。

 ダンジョン内で自生する魔物植物で、そう簡単にみつかるものではない、が……新種とは程遠い。


「そうよ。マンドラゴラね──────だけど、ここを見てみればわかるわ」


 そういってニヤリと笑うキャロル。

 彼女がPC画面をコツコツと叩いて示す。


 それは、当のマンドラゴラのサイズの部分だ。


「サイズぅ…………………って、うそ?!」


 ……デッカ!?

 ───デェェェエエッカァァァアアア!!


「さ、さ、3メートルって……あんた、これ!」

「ビックリでしょ?! 驚いたでしょー!! このサイズのマンドラゴラがダンジョンのどこかに自生しているのよ」


 ただでさえ殺人音波を出すマンドラゴラだ。


 たかだか30cm程度の個体で、ノイズキャンセラーを最大にしてようやく防げる音量を出すというのに、このサイズ。


 ……おそらく、このサイズのマンドラゴラなら、音波だけで周囲の物体をバラバラにしてしまうだろう。


 当然、採取など不可能だ。


 しかし、事実としてこのサイズのマンドラゴラが採取され、あろうことか地上に持ち出されている。


「ちょ、ちょ、ちょ──ちょっと、あり得ないわよ! こんなの嘘に決まってるじゃない。きっと数字を改ざんしたか何かで───」

「それはないわ。……だって、器材が機械的にデータを記録してるだけよ? それに、スキャンされた細胞サンプルの分析結果をみても、……やはりこのサイズで間違いないわ」


「そんな……。じゃ、じゃあ、いったいどうやって採取したのよこんなの──」


 殺人音波を出すマンドラゴラを引き抜くには、採取者自身が対策を施すか、……あるいは遠隔で採取するかなどの方法が考えられる。


 具体的には至近距離の音を耐えられる装備で引き抜くか、あるいは紐などで十分に離れてから引き抜くなどの方法がある。



 ───だが、このサイズではそのどれもが困難だ。



 通常の防音装備ではまったく意味をなさない。

 仮に音を防げたとて、このサイズのマンドラゴラの音波を至近距離で聞けば音の振動だけで全身が破裂するだろう。


 そして、遠距離から引き抜くのもまた困難。


 ただでさえ、固く根付くマンドラゴラだ。

 ……このサイズが根付いていた場合、引き抜くには戦車並の馬力が必要になるだろう。

 もちろん、到底人力では不可能。

 そして、ダンジョンに戦車を持ち込むのも、現状は(・・・)ほぼ不可能。


 となると……??


「それが分かったら苦労しないわよ。……だけど、実際に引き抜いて持ち帰った人物がいるのは間違いないわね」

 んな、アホな……。

「……いったい誰なのよ?」

 そのアホは。


 フルフルと首をふるキャロル。

 もちろん、それが分かれば苦労はない。


 しかし、

 ジェシーの当然の疑問に、キャロルは勝ち誇った笑みを浮かべた。


「ふふ。でも、ちゃーんと調べましたよー。うふふふふ。なーに、簡単なことだったのよ。振込先を照会すればいいだけなんだから」

 なんのことはない。

 銀行に確認すればあら簡単。国連をバックにすれば、連邦銀行からだって情報を引き出せる。

 もっとも、このハンターは、隠す気もないようで、口座にバッチリと会社名(・・・)がのっていた。

「うふふふ。それによると、この新種ハンター(・・・・・・)はおそらく日本人。……それも、民間の人間ね」


 メールの送り先にはご丁寧に、電話番号と会社名と住所まで記載されていたのだ。

 銀行に照会するまでもなかったのはご愛嬌。

 

 というか、一企業だ。

 相手も正体を隠す気はないのだろう。


「え? うそ?! み、民間なの?! じゃ、じゃあ、すぐに接触しなきゃ! どんな奴か知らないけど、研究所に確保すべき人材よ!」

 ジェシーの当然の反応。

 しかし、

「そうね……。それに報酬を出したくても、これ以上は予算もないし、このままじゃ、新種登録の報酬金を払いきれないかもしれないし……」


 窓際部署故、新種鑑定部門にはお金がない。


 そして、実績も少なかったため、新種鑑定の報酬用の予算は年々減らされていき、今にも尽きようとしていた。


 ……まさか、まさか。

 立て続けに5件もの新種認定されるとは、さすがの国連の会計部門も予想していなかったのだろう。


「え、ええ~?! もう予算切れ?! な、なら、まずは報酬支払のため、予算の増額申請ね!……それと、人物照会のため日本大使館と……念のため『CIA』に協力を求めましょう」


「えぇ、予算の増額申請なら、もう終わっているわ。……だいぶ渋られたけどね───なにせ、新種認定ごとに一件あたり1万ドル(・・・・・・・・・)の報酬ですもの」


 国際機関が報酬未払いともなれば信用問題だ。

 それ以前に、新種登録でこの申請者の行方を抑えておく必要がある。


 なんとしてでも、今後ありうる新種登録の報酬金は払い続けねばならない。

 絶対に逃がしてはいけない人物なのだから───。


「あとは、役所の仕事ね……ふふふふ! 楽しくなってきたわねー!」

「そ、そう? 私はなんだか面倒ごとの予感しかないんだけど……」


 研究意欲に燃えるキャロルとは別に、現実的なジェシーは苦笑いを浮かべるのみだ。



 しかし、ここで彼女たちは思い違いをしていた。




 振込先にいるのが、必ずしも本人ではないということに─────────……。

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