第17話「YOUはミサイル」
オーガの巨大鉈が振り上げられる。
その刹那、刹那がスローモーションのように……。
「……あ、俺、死んだわ」
そう思った瞬間……。
まさに凶悪なまでの鉈が振りおろッ───。
『わふッ♪』
べし
『ぐるあぅ……』
おっっっふ……。
オーガさん、股間を抑えてうずくまっちゃったよ───。
うわー……。
「ありゃいてぇーわ」
つーか、ポンタさん、つぇー。& 容赦ねー。
前足で、オーガの股間強打するとかさぁ。
……あーあれは絶対痛い。超絶痛いやつだ……。
高橋も思わず前屈み。
『ぐ、ぐるぉぉぉぉ……』
股間を押えて、オーガ涙目。
『ごふッ』
直後──全身からブシューーーー!! と血を噴き出して、ついにズズン! と完全に倒れ伏す───!!
───う、うわー。
よく見たら、あちこちズタズタでグローイ……。
どうやら、既に瀕死だったらしい……。
「え、えーと……? ポンタさんや?」
『わふ?』
「……これ、やっぱポンタ君……いや、ポンタさんが捕ってきたん?!」
『わふわふ♪ わふぅ♪』
めっちゃドヤ顔のポンタ。
とりあえず撫でておくと『へっへっへ♪』と嬉しそう。……目ぇキラキラやん。
「いや、すげーなポンタ。……オ、オーガって、下層とかにいるモンスターじゃなかったっけ?!」
この前モンスターの種類を検索した時見たよ。
たしか──────ほら、これ。
そう…………これぇえ!
スマホを操作すると、確かに褐色肌にこん棒を構えた『大鬼』の姿が映っている。
3m超えの人食い鬼 通称:オーガ
討伐推奨レベル───…………。
『A』
え、えー? エーって、Aか……。
……いや、それ───。
「…………ち、ちょちょちょ、超危険指定モンスターじゃねーかぁぁぁあああ!!」
え?
って、これマジか?!
概ねモンスターの強さを格付けすると、E~Aに分けられる。
その時の状況や戦場、または数にもよって大きく異なるが、個体としてみるなら───。
ゴブリンがD級、オークがC級───……で、飛んでオーガがA級モンスターって……うそぉ?!
重武装のハンターがパーティを組んで倒すことが推奨されているモンスターだとぉ。
備考欄、ぽちー
…………。
……。
オーガ:非常に好戦的なモンスター。中堅以下のパーティが遭遇した場合は逃走を推奨。または、その際は緊急無線にて、援軍を要請すること。引き連れ厳禁。
……だってさー。
どうやら、自衛隊や米軍でも、単独で撃破することはめったにないうえ、
基本は重火器───対戦車ミサイルや無反動砲で倒すレベルだという。
って、
…………た、対戦車ミサイルぅ??
『わふッ♪』
え?
ポンタ君、ユーは、対戦車ミサイルなん?
え、ええーどんだけぇ?
YOUは、どんだけ規格外なーん?
……いや、わりとマジで。
ふつー日常生活で「対戦車ミサイル」とか「無反動砲」って単語、聞かないよ?
聞ッかないよぉぉおお~!!
「HAHAHA! あはははははははははははははははははは、はーーーーーー………………」
…………はー。
マジで、これどうしよ……。
庭に鎮座したオーガの死体を意識しつつ、空を仰ぐ高橋であった──。




