朱色の雫 ―序章―
※グロテスクな表現有り。 読みにくい箇所有り。 誤字、脱字があるかもしれない。 世界観がわかりにくい可能性有り。 ↑ 以上を踏まえてくれる方はこのまま読み進めて下さい。
自分の死が訪れるとき、自分にしか見えない蝶々が現れる。
それは暗い闇色で紅いまだら模様が広がっている。
人々はその蝶々を畏れた。
その蝶々の名は『死司蝶』。
死を運んでくる、妖しくも美しい、畏怖される蝶々である―
―朱色の雫―
―『私はあと半年しか生きられない』
『俺はまだ死にたくないんだっ…』
『嫌…痛い…よ。誰か助けてよ…』
『止めてくれ!まだ僕は生きているんだ!死んでなんかないっ!!』
声ガ聞コエル。
痛ミニ耐エル声ガ。
人々ノ悲痛ナ叫ビガ。
絶望感ガ。
全テノ感情ガ私ノ中ニ流レコンデクル。
『サヨナラ。紗絢…幸せにね。』
待ッテ。
マダ行カナイデ!
マダ何モ話セテナイ!
大切ナコトヲ話シテイナイ!!
アァ…マダ行キタクナイヨ…。
「私、まだ、生きていたいよ…」
―チュンチュン
朝日が窓から差し込んでいる。
私は目覚めても何をするわけでもなく、ただベッドに寝ていた。
いつも通りの朝。
変わりのない部屋。
朝の空気はいつもより澄んでいるような気がした。
―トントン
「紗絢ちゃん、ちょっといいかな。入るよ。」
ノックの後、静かに扉が開いた。
「…僕のこと覚えているかい?田神正明。君の担当主治医だった。」
男は白衣を着ていて優しそうな雰囲気を醸し出していた。
「田神…先生?」
「よかった。覚えているようだね。」
男はそういうと、少し微笑んだ。
「私、死んだんじゃ…?ここは…」
脳裏に浮かぶ光景。お母さん、お父さん、優しかったお姉ちゃん。みんな泣いていた。みんな苦しそうに、泣いていた。
「確かに君は死んだ。病気の進行が思ったより早くて、手術をしても間に合わなかった。」
「じゃあどうして私はここに」
「体を造ったんだ。」
「え…」
「幸い、脳にまでは病魔が進行していなかった。だから進行してくる前に別の体へ移植したんだ。」
―『ベツノカラダ』―
イマノジブンハ
ジブンジャナイ…?
「…嘘っ!」
私は勢いよくベッドから起き上がり、鏡を見た。 そこに映っていたのは…
「わ…たし…?」
鏡には私は映っていなかった。
映っていたのは紺色の長い髪で、すらっとした体型の、十代後半くらいの女の子。
「だれ?」
私は今の自分の姿に驚きを隠せなかった。
「その体はもう紗絢ちゃんの体だ。これからはもう一日中寝ていることもない。歩くことも、外に出ることも出来る。君は自由になったんだ。」
「自由…?」
「あぁ。もう病魔の恐れはないさ。」
男は少し俯いて呟いた。
今思えば、ここで気がつくべきだった。
これからの奇妙な事件の始まりだということに−
―朱色の雫・序章終了―