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対策

次の日。

朝七時。キークは目覚めた。となりのベッドをちらっと見ると、クリミアと小竜が抱き合って寝ていた。


(たった一晩でずいぶん仲良くなったな)


まだ眠気がとれないキークは起き上がり、洗面台で歯を磨き、顔を洗い、眠気をとった。洗面台から移動し、キークはリュックの中からラナイア創世記を取り出し、窓際の椅子に座って読書を始めた。この時間帯、クリミアが起きるまで読書をするのがキークの日課である。


「何を読んどるのじゃ?」


尋ねられ顔を上げると、そこにはパタパタと飛んでいる小竜がいた。いつの間にか起きたようだ。


「ラナイア創世記って本だよ」


「歴史書じゃな」


「そうだよ。この世界の成り立ちについて書かれた本だ」


「ふーん」


聞いてきた割には大した興味があるような反応ではなかった。


(そういえば、この本には神竜の絵が描かれているし、何か思い出せるきっかけにならないかな?)


そう考えたキークは早速三匹の神竜の描かれているページを開き、小竜に見せた。


「これがこの世界を創世した三匹の神竜だ」


流石に自分と同じような姿の生物の絵を見て、小竜は興味深そうに挿絵を見ていた。自分の翼やしっぽも見て絵と見比べている。


「これ見て何か思い出さないか?」


「いや、何にも」


「そっか・・・」


同種族の絵を見ることで何か思い出せないかなと、考えたキークの思惑はまったく成果はなかった。小竜は本に興味がなくなり、近くにあるテーブルの上に座った。


「キーク、余は腹が減ったのじゃ」


「パンでも食べるか?」


「食べるのじゃ」


キークは昨日買ってきたパンの残りを小竜にあげると、小竜はパンにかぶりつき、そのまま食事を始めた。のども乾くだろうと思い、ついでにコップに牛乳を入れて近くに置いておいた。キークも朝ごはんにパンを手に取り、本を読みながら食事を始めた。キークと小竜が食

事を終えるころにクリミアが起きた。クリミアは歯を磨き、顔を洗って食事を始めた。


「二人とも起きるの早いね。ご飯もう食べ終わったの?」


「ああ、終わってるよ」


「そっか、私だけ寝坊だね」


「別に遅くに起きたわけでもないだろ」


現在朝八時。クリミアは大体この時間に起きるのだ。クリミアはパンをキークの十倍は食べた。朝からとんでもない食欲で小竜は呆気に取られていた。「人間はあれくらい食べるのが普通なのか?」と小竜がキークに尋ねたが、「アレを基準にはしないでくれ」と人間への認

識を誤解させないようにキークは強めに訴えといた。

クリミアも食事を終えて、キークとクリミアは出かける準備を始めていた。


「どこに行くんじゃ?」


朝ごはんを食べ終え、退屈になった小竜はベッドの上でゴロゴロしていた。そんな小竜をクリミアはほほえましそうに見守っていたので、代わりにキークが答えた。


「これから情報屋に会いに行くんだよ」


「情報屋?」


耳慣れない言葉で小竜はゴロゴロをやめて、キークを見た。


「お前のことを調べるために聞きに行くんだよ。何か思い出すきっかけになるかもしれないだろ。それと、新しいリュックも買おうと思ってな」


「リュック?」


キークが指さす先にはボロボロのリュックがある。キークが長年旅で愛用してきたものだ。


「お前をこの中に入れて連れ歩きたいし、もっと大きなものを買わないとな」


「ちょっと待つのじゃ。余をあんな布袋に入れるつもりか?」


小竜はパタパタと飛んでリュックの近くに着陸し、リュックを忌々しそうにつついた。


「余はこんなのに入りたくないのじゃ」


「でもお前を外に出して連れて歩くわけにはいかないからな・・・」


「なぜ余は外に出たらダメなのじゃ?」


「それは目立つからだよ小竜ちゃん」


小竜の質問にクリミアが答えた。


「伝説上の生物が普通町にいたら目立っちゃうからね。珍しい生き物は捕われて高値で売られちゃうよ」


「それは確かに嫌じゃな・・・」


クリミアの言う通り、希少な生物は高値で市場で取引されている。しかも解剖されて錬金術師の研究材料に使われてしまうケースもある。特に超希少生物である竜なんかが錬金術師の手に渡ればどうなってしまうのかを想像するのは容易である。


「それでも、余はこんな窮屈そうなところにずっといなければならないのか?何とかならないのかクリミア?」


「確かにずっとリュックにいるのも大変だよね。でも、いい方法あるかな・・・」


んー、と考え込むクリミア。小竜の姿が見られず、かつ、正体がばれない方法を模索する。


「一つ方法がある」


考え込むクリミアと小竜とは裏腹に、キークはあっさりと答えた。


「本当キーク?」


「ああ、金が大分かかりそうだけどな。あと、大分目立つことにはなる」


「外に出られるなら何でもいいのじゃ。キーク頼むのじゃ!」


小竜がキークに頭を下げた。クリミアもキークになぜか頭を下げた。


「私からもお願い。小竜ちゃんにあまり窮屈させる思いさせたくないな」


(相変わらず、おひとよしな性格だな・・・)


そんな幼馴染の性格がキークは好きである。それに、キーク自身もクリミアとは同意見だった。小竜の助けになりたいと思っていた。


「わかった。それじゃ最初にそれを何とかしよう。それまではリュックの中で我慢してくれ

よ」


「了解じゃ!」


そう言って小竜はリュックの中に納まった。そのリュックをキークは背負った。


「それでキーク、どうするつもりなの?」


「ある店に行こうと思う」


「店?」


「ああ。『リプルシェ』。人形屋だよ」




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