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流通の街

流通町イスカ。


イスカ地方、フツール王国の様々な食材、衣類、鉱石など様々なものが集まる町。また、イスカはフツール王国四大都市の中継地点となっている。


そのため、人も多く集まる交易の町として有名である。この町の大通りでは年中バザールが開かれていて一般の人でもギルドに許可をもらえば、店を開くことができるので、大通りにはよく人が多く集まっているのだが・・・。


「人、全然いないね」


町に着いたキークとクリミアは大通りを歩いていた。まわりの景色を眺めながらクリミアはキークに話しかけていた。


「いつもなら賑やかなのにね、ここ」


「ああ、今日は静かだな」


大通りには人がほとんどおらず、バザールの店も数える程度しかなかった。


「前来たときはいろいろ買い物できたり、おいしいもの食べれたりして楽しかったんだけど、なんか寂しいことになっちゃってるね」


「仕方ないよ。アサルトベアのせいで物資が町に入ってこないんだろ」


イスカ地方の物産はほとんどがほかの地方の物資から成り立っている。原産のものは少ない。物流が阻害されてしまえば物流の拠点の町としてはかなりきついだろう。


「アサルトベアの駆除が終わらない限り町は元に戻らないだろうな」


「そうだね。早く戻るといいけど・・・」


そんな話をしながら、キークとクリミアは町の冒険者ギルドに向かっていた。馬車の護衛も無事に果たしたので、報酬を受取りに行こうとしていた。


二人は冒険者ギルドに入り、まわりをキョロキョロと見るが、やはりギルドもいつもより人が少なかった。二人は報酬を受取る窓口を訪れた。


「お久しぶりです、ニーナさん」


キークは窓口にいる一人の女性に話しかけた。


ニーナ・レクアリ。


キークたちが前にイスカの町に訪れた時に知り合ったギルドの受付嬢である。目つきが鋭く背が高いので、一見近寄りがたいイメージがあるが、話してみると気さくで明るい親切な人である。


「あら、久しぶりですね『風人雷人』のお二人さん。ソマルフさんの護衛の報酬もらいにきたのね」


ソマルフというのは先ほどまで護衛していた商人の名前である。


「ソマルフさん、あなたたちのことすごく褒めてたわよ。流石、有名人は一味違うわね」


「そう言われるとなんか照れちゃいますね」


「これ報酬の十二万レイスね。どうぞ」


「あれ、少し多くないですか?」


キークは不思議に思った。なぜなら依頼を受けるとき報酬は十万レイスになっていたからである。


「追加の二万はソマルフさんからのお礼よ。アサルトベアから身を守ってくれたお礼だって」


「なるほど。そういうことですか。でしたら、ありがたくもらいます」


ラッキーと、キークは思った。


「本当に助かったわ。最近の冒険者じゃ依頼を途中で投げ出す人は多いし、困ってたのよ」


「騎士は護衛してくれないんですか?」


クリミアがニーナに尋ねると、ニーナは少しだけうんざりした表情見せた。


「頼めば護衛してくれるわよ。ただし、高くつくけどね」


「やっぱりな」


「金のある商人は騎士に護衛してもらってこの町に来れてるけど、金に余裕のない商人は一般の冒険者を雇うわけ。でもまともな冒険者が少ないから・・・」


「この町にほとんどの商人が来れてないと」


「そういうことね」


つまり、金のない商人はまともに護衛のできる騎士に依頼できず、イスカの町に来れない状態になり、町の活気がなくなっているということである。


「町周辺のアサルトベア討伐はされてるんですか?」


「町長が高い金払って騎士に依頼したそうよ。それで、一週間前から討伐が開始されてるけど、討伐してもまたどこからともなく現れるみたいなのよ。今回風人さんと雷人さんが三体のアサルトベアを退治してもらいましたが、おそらくまだいます。昨日なんて十体も目撃さ

れてましたし」


ニーナの話を聞いて、キークとクリミアはアサルトベアの討伐はうまくいっていないということを察した。


「そもそも、今回のアサルトベア出現はいろいろと変なところが多いんです」


「変?」


ニーナの言うことが気になったキークは尋ねた。


「もともとアサルトベアはイスカ周辺には生息していないんですよ。それに、アサルトベアは群れで行動しないらしいです」


ニーナは手元にあった本をぺらぺらとめくり始める。中身はこれまでのアサルトベアによる被害記録である。


「どれも群れで襲われたという報告ばかり。虚偽の報告じゃない。だけど、アサルトベアの習性的に群れで行動することはない。この事件、風人さんならどう考えますか?」


「は?」


突然話をふられ、戸惑うキーク。その様子を見てニーナはニコニコしている。キークの考えを楽しみにしている様子だ。


「俺の予測だけど、オーレントの仕業なんじゃないか?」


「オーレントの?」


クリミアがキークに尋ねる。


「アサルトベアを操る能力を持ったオーレントがいるのかなって」


「何のために?」


「理由はわからないけど、イスカの町に人を近づかせないためにとか?」


「キークの言いたいことは分かったけど、でもそれって根本的に不可能だよ。もしオーレントがアサルトベアを使ってるとしたら、間接的でも人殺しをすることになる。人に殺人は不可能だよ。そうですよね、ニーナさん?」


クリミアがニーナに話を振るとニーナはアサルトベアの被害記録を見て、うなずく。


「そうね。アサルトベアに食い殺されてという報告が少なくとも十件以上はあるわね。もしオーレントがアサルトベアを利用しているとしたら殺人を平気で行ってることになるわね」


天罰への無意識の恐怖。それが、人に殺人をさせないようになっている。ゆえにキークの予測は不可能という結論に至る。


「あーあ、風人さんならこの違和感解決してくれるかと思ったけど、ダメみたいね。本当役に立たないわね・・・」


(さっきこの人俺たちに助かったとか言ってなかったか?)


ニーナの暴言にあきれるキーク。クリミアはアハハと、愛想笑いをしていた。


「とりあえず、報酬ありがたく受け取るな」


「今回はありがとね。あなたたちなら大丈夫だろうけど、今この町の周辺は危ないから早く別の地方に行った方がいいわよ」


「心配してくれてありがとうございます。でも、俺たち行きたいとこあってきたので、そこを探索したらすぐに出ます」


「行きたいところって?」


「この町の近くに新たに見つかった遺跡があるって聞きましてね」


「ああ、教会の遺跡のことね。最初はその噂で他の町から冒険者が来てたけど、アサルトベアのおかげで探索しにくる冒険者はいなくなったわね。まだ宝を見つけたって話は聞かないしチャンスなんじゃない?」


「お、それは良いこと聞きました。教えてくれてありがとうございます」


教えてくれたニーナにキークとクリミアはお礼を言って、二人は冒険者ギルドから出て行った。




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