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第6章 9 昔の彼氏

 隆司さんは何を思ったのか、私のスマホをスピーカーホンに切り替えた。すると亮平の声がスマホから聞こえてきた。


『おい、その声・・・聞き覚えがあるぞ?まさか・・お前、この間も俺と鈴音の電話に勝手に出た奴じゃないか?・・家までタクシーで鈴音を送って・・・挙句に鈴音にキスしてた男だろう?』


「!」


私はその言葉に思わず顔が赤くなってしまった。亮平・・・・一体何て事を隆司さん言ってくれるの・・・っ?!


すると隆司さんの眉間にしわが寄る。


「何だ?お前・・・ひょっとすると覗き見でもしていたのか?・・趣味が悪いな?」


隆司さんは不敵な笑みを浮かべ、挑発的に言う。


『馬鹿言えっ!誰が・・覗き見なんかするかよっ!それよりもあんな・・人の家の前で堂々とキスしている方がどうかと思うけどな?ひょっとして・・お前鈴音の事がす

好きなのか?』


「ああ、そうだ。俺は鈴音が好きだ。だからキスした。今だってキスしようとしていたところだったんだ。それをお前のせいで台無しにされてしまったけどな。」


顔色一つ変えずに隆司さんはとんでも無い事を言った。聞いてるこちらの方が顔が思わず真っ赤に染まってしまう。


『はあっ?!おい!お前、一体どういうつもりだよっ!鈴音を・・鈴音を出せっ!』


電話越しでは亮平がいつも以上にイラついている声が響き渡って聞こえてくる。すると隆司さんは私をチラリと見た。


「お願いです・・・電話・・貸していただけますか・・・?」


私は観念して隆司さんに手を差し出した。


「鈴音・・・。」


隆司さんは何か言いたげだったけども、スマホを返してくれた。


「もしもし・・・。」


『鈴音っ!誰だ、今の男はっ?!』


途端に亮平の怒鳴り声が受話器から聞こえてきた。


「お願い、そんな大声で怒鳴らないでよ。これじゃ話したくても話にならないから。」


受話器を耳元から離しながら私は言った。それにしても・・・何故亮平はここまで激怒しているのかな?私・・そんなに亮平を怒らせてしまうような事をしてしまったのかな?


『鈴音・・・そう言えばさっき会った時聞くの忘れたけど・・お前、今どこに住んでるんだよ?ひょとすると・・今電話に出た男の家に住んでいるのか?!』


「う、うん・・・そうだよ・・・。」


答えながらチラリと隆司さんの方を見るけれども、隆司さんは黙って私を見つめるだけで、何を考えているのか気持ちが読めなかった。


『その男・・・鈴音の恋人なのか?』


「違うよっ!」


即答して、私はハッとなった。・・どうしよう・・亮平に変な誤解をされたくなくて思わず即答してしまった。恐る恐る隆司さんを見ると、彼は酷く傷ついた顔でこちらを見つめている。その表情を見て胸がズキリとした。


「・・・。」


隆司さんは何を思ったか、おもむろに立ち上がる自分の部屋へ入ってしまった。


『おいっ!鈴音っ!それじゃお前、恋人でもない男の家で一緒に暮らしているのかよ。』


亮平との会話をこれ以上隆司さんには聞かれたくない・・・!いくら自室に入ったからと言ってスピーカーホンの電話が聞こえてくるかお知れないから。


「お願い、亮平。ちょっとだけ電話待ってくれる?」


それだけ言うと、私はスマホのスピーカーホンを切り替えると言った。


「ごめんね、お待たせ。」


『なんだ?お前・・今電話に何かしたのか?』


「うん、ちょっとね・・・。スピーカーホンから普通の通話モードに切り替えただけだから。」


『はあ?何だそれ?それじゃ・・・もしかして俺の声・・・ずっと外に漏れていたのか?!もしかしてあいつが、スマホの設定をいじってそうしたんじゃないのか? 』


亮平の勘は当たっている。


「うん・・・そうだよ・・。恋人じゃないって答えたけど・・本当は以前恋人だったことがある人なの・・・」


『何だよ、それ・・・。』


受話器越しからは亮平の溜息が聞こえてきた―。











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