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第5章 9 久しぶりの自分のベッド

 食器を洗い終えて、再び隆司さんに与えられた部屋へ戻り、荷物整理を再開した。全て片付け終えた頃に隆司さんがノックをしてきた。ドアを開けるとTシャツにスウェットを履いた隆司さんが立っていた


「鈴音。シャワーあいたよ。」


「ありがとうございます。」


「バスタオルとか、タオル自由に使っていいよ。場所を案内するからついて来て。」


「はい。」


隆司さんの後に続くとバスルームへとやって来た。


「ほら、ここにタオル類は入っているから。」


大きな洗面台は鏡の扉になっていて、そこを開けると中は棚になっていた。


「一番上の棚がバスタオル、2番目がタオルになっているから自由に使っていいよ。」


「ありがとうございます。」


頭を下げると、隆司さんはフッと笑みを浮かべて言った。


「ごゆっくり。」


そして隆司さんは、何故か玄関へと向かっていく。


「え?隆司さん。何所へ行くんですか?」


「ああ、このマンションの1Fはコンビニになっているだろう?ちょっとコンビニまでね。」


「そうなんですか。行ってらっしゃい。」


「行ってきます。」


隆司さんは手を振ると玄関から出て行った。


「・・・さて、シャワー浴びよう。」


私は部屋に戻ると替えの下着とパジャマを持って再びバスルームへと向かった―。



 隆司さんのマンションのお風呂場は最高だった。広々としてまるで豪華ホテルのようだった。それまで住んでいたマンスリーマンションとは大違いだ。本当にあのバスルームはとても狭くて、身体や髪を洗う時はあちこち身体をぶつけてしまう位だったしね。思わず鼻歌交じりでのんびりバスタイムを楽しんでバスルームから出てくると隆司さんがちょうど帰って来た。


「あ、隆司さん。バスルーム、使わせていただいて有難うございました。」


「ああ、どうだった。使い心地は?」


「はい、もう最っ高でしたっ!」


「そうか、それは良かった。」


「ところで隆司さん。どうしてコンビニへ行って来たんですか?」


私が尋ねると、何故か隆司さんは一瞬顔を赤らめて視線を逸らせた。


「?」


「い、いや・・・ちょっと雑誌を買いに・・・ね。」


「でも・・その割には手ぶらで帰ってきましたよね?」


「あ、ああ。買いたい雑誌が無かったんだ。」


「そうですか。」


「・・・。」


おかしい・・。どうも隆司さんの歯切れがさっきから悪い気がするけども・・・。思わずじ~っと見ていると、隆司さんが私をチラリと見ると言った。


「す、鈴音・・・。」


「はい。」


「そ、その・・パジャマ・・可愛いな。」


ボソッと隆司さんが言う。


「は、はあ・・・有難うございます。」


お礼は言ったけど、私が着ているのは青い縦じまの半そでにズボンという恰好だ。ちっとも可愛くもなんともない・・ユニセックスパジャマなのだけど・・・。しかし、相変わらず隆司さんは頬を薄っすら赤く染めて私を見つめている。

その時、突然スマホの着信音が部屋に鳴り響いた。でもこの音は・・?


「あ・・俺のスマホだ・・・。悪い、鈴音。電話に出るから・・・。」


「はい、それでは私は明日仕事なので休ませて頂きますね。」


「ああ。お休み。」


「お休みなさい。」


そして私は足早に部屋へと戻った。時刻はもう夜の11時になっていた。部屋の電気を消して久しぶりに自分のベッドに潜り込むと、お姉ちゃんと暮らしていたあの家の事が思い出されてしまった。


「もう・・・私は二度とあの家には戻れないのかな・・・。」


布団をかぶりながら思わずポツリと呟いてしまった。そして私は目をつぶるとすぐに眠りに落ちてしまった―。

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