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亮平 34

 鈴音が心配でならなかった。あんなに悲しそうに泣く姿は初めて見た。それと同時に自分の心もズキズキと痛くなってくる。鈴音…そんなにアイツが…川口の事が好きだったのか…?


俺のせいだ。川口が誠実そうな男に見えたから…本気で鈴音を好きなのだろうと思ったから勧めたのに…たった数ヶ月で切り捨てるなんて許せない。一体鈴音の何処が駄目だったんだ?あの写真に写っていた女よりも余程鈴音のほうが美人なのに。



 鈴音と別れて家に帰宅した後も、ずっと鈴音の事が頭から離れない。まさか…思い余って自殺したりしないよな?そう思ったから俺は別れ際に電話を入れるから必ず出るように約束させた。

俺は時計を見た。丁度電話を掛けると言った約束の時間になったからだ。


「頼む…鈴音…電話、出てくれよな…?」


俺は祈るような気持ちで鈴音に電話を掛けた―。



トゥルルルル…

トゥルルルル…

トゥルルルル…


5コール目でも鈴音はまだ電話に出ない。まさか…鈴音…っ?!


「頼む…!鈴音、電話に出てくれ…っ!」


俺は祈るような気持ちでスマホを握りしめた、その時―。


『はい、もしもし…』


鈴音が電話に出てくれた!安堵のあまり、思わず俺の目に涙が滲む。


「良かった…鈴音…」


鈴音は俺の声が泣き声だったことに驚いていた。だから俺は鈴音が自殺でもしてしまったのじゃないかと思って心配したことを正直に告白した。何しろあの時、鈴音が青ざめたあの顔が…交通事故直後の鈴音の顔に似ていたから…。しかし、その事を話すと、鈴音は信じられないことを言った。


『そ、そんな事しないよ…だってもし自殺でもしたりしたら…直人さんが責任を感じてしまうかもしれないでしょう?』



鈴音…こんな状態でもまだ川口の事を…?!気づけば俺は失恋で傷ついているのにも関わらず、鈴音を罵っていた。すると鈴音はまるでもうこれ以上聞きたくないと言わんばかりにやめてと叫ぶ。その後…少し落ち付いたのか、今度は明日の夜川口のマンションに行って見ると言い出したのだ。確かに、川口が本当に浮気しているかどうか確認する為にはアイツのマンションへ行くのが一番だろう。そこで俺たちは明日の夜一緒に川口のマンションへ行く約束をした―。




****


 翌日の夜―


俺と鈴音は川口の部屋の前に立っていた。鈴音は顔が真っ青になっている。…大丈夫なのだろうか?そして鈴音は俺が見ている前で震えながらインターホンを押した。


ピンポーン…


しかし出る気配は無い。


「反応無いな…」


オレが言うと鈴音が頷いた。


「うん…もう、鍵を開けて入るしかないかも…」


鈴音は合鍵を取り出すと鍵穴に差し込む。


カチャリ…鍵が解除される音が聞こえ、鈴音はノブを回すと扉を開けると部屋の中は真っ暗だった。


「うん?留守か?」


すると背後で鈴音が息を呑む気配を感じた。


「そ、そんな‥‥」


鈴音が目を見開いてブルブルと震えている。


「え…?」


俺は再度川口の部屋を見て愕然とした。部屋の中がもぬけの殻になっている。ま、まさか…!鈴音に内緒で勝手に引っ越したのか?もう一度鈴音の方を振り返った瞬間…鈴音がガックリと崩れ落ちる。


「おい!鈴音っ!」


既のところで抱きとめて、鈴音を覗き込む。


「鈴音っ!」


鈴音は…気を失っていた―。


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