表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

326/511

第19章 14 年下の男の子

「あの、聞きたいことがあるんですけど」


新宿駅を目指して繁華街を並んで歩きながら私は男の人に尋ねた。


「はい、聞きたいことって何ですか?」


「何処かでお会いしたことありましたっけ…?」


「あ…」


途端に何故か彼の頬が赤くなった。


「は、はい。僕たち…会ったことあります。あの、ファミレスと…公園で…」


最後の方は今にも消え入りそうな声だった。


「え…?ファミレスと…公園…あっ!も、もしかして…!」


そうだ!私はこの人に泣いているところを見られてしまっていたんだ!それに公園でも落ち込んでる姿を…っ!


「思い出してくれましたか?」


彼ははにかみながら言った。


「はい、思い出しました!な、何だか恥ずかしいですね。情けない所ばかり見られてしまって…」


照れ臭さを隠すために髪を撫でつけながら言う。


「いえ、僕の方こそ…失礼な事言ってしまって…」


「失礼な事?」


「公園で…言いましたよね?帰る家が無いんですか?って…」


「あ…ああ!そう言えば言ってましたね?」


すると彼は言った。


「すみません。あの時…咄嗟に変な事を言ってしまいました」


「そんな、いいんですよ。全然気にしていませんし、むしろ気に掛けて頂いてありがたかったです。確かにあの日はちょっと落ち込んでいたので…」


「…」


彼は話している間、黙って私を見つめながら隣を歩いている。


「ところで、この間は千駄ヶ谷のファミレスで働いていましたよね?そして今日は新宿の居酒屋で働いているんですか?バイト掛け持ちなんて大変ですね。でも知りませんでした。居酒屋のアルバイトは高校生も出来るんですね」


「高校生…」


彼は何だか妙な顔をして私を見ている。え?ひょっとして私…何かまずい事を口走ってしまったのだろうか?


「あ、あの…」


すると彼は言った。


「バイトじゃないんです。飲食店に派遣される派遣社員やってます。それと…高校生じゃないです。今19歳です」


「え?そうなんですか?!ご、ごめんなさい!てっきり高校1年生くらいだと思ってました!」


「いいんです。童顔だからよく色々な人に間違えられているので。だけど…」


彼はじっと私を見た後に、何故か顔を赤らめて視線を逸らすと言った。


「やっぱり…僕より年上だったんですね…」


「え?」


思わず聞き返すと、再び彼は顔を真っ赤にさせた。


「あ、別に悪気があって言ったわけでは無くて、楽しそうにお酒飲んでるな~と思って‥」


「そうですね、お酒は好きですよ」


そこまで話した時、丁度新宿駅に到着した。夜の10時半を過ぎても新宿駅は相変わらずごった返している。


「あの、総武線ですよね?」


自然と2人で総武線乗り場へ歩きながら彼が尋ねて来た。


「はい。そうです」


「そうですか…ではここでお別れですね…」


彼は私を見ると言った。


「千駄ヶ谷には行かないんですか?」


「ええ、今夜は友達の家に泊まるので」


「そうだったんですか…」


そして私は名前も知らない彼と改札で別れることになった。


「それじゃ、失礼しますね」


頭を下げて、ホームに向かおうとすると声を掛けられた。


「あのっ!」


「はい?」


振り向くと、そこには真剣な顔で見つめている彼が立っていた。


「あ、あの…その…」


「?」


「き、気をつけて帰って下さいっ!」


「?ありがとうございます…」


すると彼は私に背を向けると逃げるように走り去って行った―。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ