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第3章 7 目にしたものは

夜8時半―


「ふう~疲れた・・・。」


遅番だった私は井上君と店の戸締りをして、大きく伸びをすると言った。


「それじゃ・・帰ろうか?」




「加藤さん、遅番だったけど・・帰りは大丈夫なのかい?」


隣を歩く井上君が声を掛けてきた。


「うん。大丈夫。そういえばまだ言ってなかったっけ?私ね、ママチャリ買ったんだよ?だからそれに乗るから大丈夫。スイ~ッってあっという間に帰れるよ。」


「ママチャリ・・・・。」


井上君は何故か苦笑している。


「何?私、何か変な事言った?」


「い、いや・・。まだ独身で若いのに、ママチャリなんて言うから・・。普通に自転車って言えばいいじゃないか。」


「そうだね、うん。自転車があるから大丈夫。それよりスーパー開いてるかな・・。あ、コンビニでもいいか。」


ブツブツ呟いていると井上君が声を掛けてきた。


「何?買い物でもあるの?」


「うん。お弁当買って帰ろうかと思って。お姉ちゃんと亮平は今日はご飯食べて帰るから。」


「・・・ならさ。」


「うん?何?」


「駅前に安くてうまい立ち食いソバ屋さんがあるんだ。一緒に食べて帰らない?」


「へえ~立ち食いソバ屋さんて・・・まだあったんだ。」


「何だよ、まだあったって・・・。あ、いや。立ち食いソバ屋って言っても、ちゃんと座って食べられるからな?でも回転率がいいからな・・食べたらすぐに出なければならない。そんな店だけどコスパはいいぞ?」


「ふ~ん・・・コスパねえ・・・うん、いいよ。行こうっ!」


そして私と井上君はコスパの良い立ち食いソバ屋へと向かった―。




「ええっ?!おそばにコロッケ乗せるの?し・・信じられないっ!」


井上君がネギとわかめが乗ったソバのうえにコロッケをのっけたのを見て仰天した。


「何言ってるんだよ。これこそ究極の行きつく立ち食いソバの王道なんだぞ?知らないのか?」


「そんなの知らないよっ!絶対かき揚げが合うんだってばっ!」


私は箸でおそばの上にのったかき揚げをつまみ上げると言った。


「いーや、そんなことはない。騙されたと思って今度食べて見なよ。」


「立ち食いソバ屋なんて女ひとりじゃ何だか入りにくいよ。」


私はおそばをフウフウ覚ましながら言うと口に運ぶ。う~ん・・おいしいっ!


「こんだけ豪華なおそばで値段が400円なんて最高だね。」


私は笑いながら井上君に言うと、何故か顔を赤らめて私を見つめる井上君がいた。


「あれ?顔赤いよ?どうしたの?」


「あ、ああ。実は七味唐辛子掛け過ぎちゃって・・・」


「それで辛くて顔赤くしてたの?アハハハ・・・何それ、子供みたいだね。」


「ま、まあな。あ~でもコロッケそばは旨い!」


「何言ってるの、やっぱりかきあげそばだってばっ!」



そして私と井上君は互いに食べ終わるまでおそば論争を繰り広げるのだった—。


「それじゃ、気を付けて帰れよ。加藤さん。」


駅の改札で井上君が言う。


「うん。井上君も気を付けて帰ってね。」


「俺は男だから大丈夫だよ。」


「そうだね。でも私も自転車だから大丈夫だよ。それじゃあ、またね。」


手を振って改札をくぐろうとした時―。


「か・・加藤さんっ!」


「何?」


いきなり大声で呼び止められた。


「今度・・・今度、給料出たら一緒に居酒屋行こう!」


「うん、いいよ。」


笑顔で答えると、井上君の顔がパアッと明るくなった。うん、よほどお酒が好きなんだね。


「そ、それじゃあまた明日!」


「うん、またね。」


そして私と井上君はそれぞれ反対ホームへ向かった―。




 自転車で家へ帰宅すると門の前に亮平の車が止まっていた。


「あれ・・?もう帰って来たんだ・・。」


自転車を降りて車に近づこうとしたその時、私は足を止めた。


「!」


車の中で・・・お姉ちゃんと亮平は・・・キスをしていた—。



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