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第3章 6 2人の初デート

 良く晴れた土曜日の朝―


今日はお姉ちゃんと亮平の2人きりの初デートの日。


「忍さん、どうですか?この車。」


亮平は自分の愛車を前にお姉ちゃんに誇らし気に言う。


「うわあ・・・亮平君。どうしたの?その車?」


玄関から出てきたお姉ちゃんは亮平の車を見て目を丸くする。


「フフフ・・・この車は新古車と言って、展示品として並べられていた車でほぼ新車同然なんですよ。どうですか?この見事なデザイン。黒い車体が渋いと思いませんか?」


亮平は自慢げに車を撫でながら言う。


「本当ね。とても素敵な車だわ。」


お姉ちゃんは笑みを浮かべながら言う。


「忍さん、人を乗せるのは貴女が初めてなんですよ。いや~初めて乗せる相手が忍さんなんて本望です。しかも2人でディズニーランドなんて、まるで夢のようだ・・。」


最早私は完全に蚊帳の外だ。だけど・・・私が2人のデートプランを考えてあげたのに・・それなら・・。


「えい。」


ムニッ


「い・・・いってえ~っ!!な、何すんだよっ!鈴音っ!なんで両方の頬を引っ張るんだよっ!痛いだろっ!」


「そう、痛かったんだ。良かったね?さっき夢のようだと言ってたから夢かどうか分からせてあげようかと思ったんだよ。」


フフンと私は腕組みして言う。


「このやろっ!もうお前にはお土産は買ってきてやらないからな?」


「うん、聞こえないな~。そうだ、私にはTシャツのお土産が良いな。よろしく!あ、サイズはMだからね。」


「お、お前なあ・・・俺は今お土産を買ってきてやらないって言ったんだぞ?」


すると今までクスクス笑って私達の様子を見ていたお姉ちゃんが言う。


「フフフ・・・・それじゃ私が買ってきてあげるわ。そうだ、鈴音ちゃん。私とペアのTシャツを買ってきてあげるわね。」


「本当?ありがとう!お姉ちゃん大好きっ!」


私はお姉ちゃんに抱き着いた。お姉ちゃんの身体からはフローラルな香水の香りがする。


「それじゃ、亮平君。今日1日よろしくお願いします。」


お姉ちゃんが仰々しく頭を下げると、亮平は顔を真っ赤にさせて言った。


「い、いや!忍さん、こちらこそよろしくお願いしますっ!」


そして助手席のドアをガチャリと開けた。


「どうぞ、忍さん。」


「ありがとう、亮平君。それじゃ、鈴音ちゃん。行って来るわね。晩御飯は・・。」


「あ~いいのいいの、2人で外食してきて。私も適当に食べるから。」


「鈴音。お前もう出勤しなくていいのか?」


亮平が運転席に回ると尋ねてきた。


「うん。私は今日遅番なんだよ~。」


すると少しだけ亮平が真面目な顔つきになると言った。


「遅番か・・・。気を付けて帰って来るんだぞ?」


「う、うん・・・。」


それだけ言うと、亮平は車に乗り込むとすぐに発信して行った。


「行ってらっしゃ~い!」


私は元気よく手を振って2人を見送った―。




 土曜日という事もあって、午前中はお客様が一杯であっという間に昼休憩になっていた。


「それじゃ、お昼休憩行ってきます。」


係長に頭を下げて、手提げバックを持って店舗を出ると―。


「おーい!加藤さんっ!」


振り向くと井上君が追っかけてきた。そこで立ち止まっているとすぐに井上君は私に追いつき、言った。


「加藤さん、お昼これからなんだろう?一緒に食べに行こうよ。」


「うん、そうだね。何食べよっか。」


「じゃあハンバーガーでも食べに行こうか?」


井上君の提案に乗った。


「よし、それじゃ行きましょ~!」




「ええ~っ!何だって?お姉さん・・幼馴染とディズニーランドへ行ったの?!」


ハンバーガーショップでお昼を食べながら井上君が大声をあげた。


「うん、そうだよ。」


アイスコーヒーを飲みながら返事をすると井上君は真剣な顔で尋ねてきた。


「ねえ・・加藤さんはそれでいいのか?」


「いいって・・何が?」


「それは・・・。」


井上君は言いかけ、口を閉ざしてしまった。・・・どうしたんだろう?


「まあいいかっ!旨いな!ここのハンバーグは!」


「うん、そうだね。これ食べて午後の仕事も頑張ろう。」


「そうだな。」


2人でハンバーグを食べながら私は思った。


お姉ちゃんと亮平・・・今頃楽しんでるかな―。









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