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第15章 3 初めてのコーヒー豆選び

 ホームに降りると私はすぐにスマホを取り出し、川口さんに連絡を入れた。


トゥルルルル・・・


コール音が2回なったところで川口さんが電話に出た。


『もしもし?』


「もしもし、さっきはごめんね。」


『いや、いいよ。それで今は何所なの?』


「駅のホームだよ。これから電車に乗って帰る処。」


『どのくらいでこっちに着きそうかな?』


「う~ん・・30分位かな・・・。」


『なら迎えに行くよ。』


「え?ええっ?!い、いいよ・・・そんな別に。悪いよ。だって川口さんはもう家に帰っているんでしょう?」


『うん・・・でも1人で帰らせるのが心配なんだ。それに・・会いたいし。』


「・・!」


思わずその言葉に顔が赤面してしまった。


『もしもし?加藤さん?どうかした?』


「う、ううん。何でもない・・。」


丁度その時、運が良く電車がホームに滑り込んできた。


「あ、それじゃ電車来たから・・一度切るね。」


『それじゃ駅で待ってるから。』


「う、うん。それじゃまた。」


そして電話を切ると、目の前で開いたドアから私は電車に乗り込んだ―。




ガタンゴトン・・・


電車の中で揺れながら窓の外を眺めていた。すると不意にスマホにメールの着信が入ってきた。相手はお姉ちゃんからだった。


「何だろう・・?」


メールをタップしてメッセージを開いてみた。



『鈴音ちゃん、今日から仕事だったんでしょう?お疲れさま。体調の方はどうかしら?突然眠くなったりはしなかった?そう言えば今日はケースワーカーの服部さんが来てくれた日なんだけど、アドバイスを貰ったの。今まで出かけると言えば買い物に行く位だったけど、リハビリとして何処かへ遊びに行ってみるのも良いでしょうと言われたので、鈴音ちゃんさえ良ければ何処かへ遊びに行かない?返事待ってます。』


「遊びに・・そうだ!」


そこで私にある考えが閃いた。私が出かける事にして、実際は亮平と2人で出掛けら得るようにセッティングしてあげればいいんだ・・・。亮平からは余計なお世話と思われてしまうかもしれないけれど・・・私が動かない限り、お姉ちゃんと亮平は元の恋人同士に戻れないだろう・・。


 まずは亮平にメッセージ送ってみよう。私は亮平のアドレス帳を開くと、メールを書き始めた―。



****


 新小岩駅に到着し、改札を出ると既にそこには川口さんが立って待っていた。

彼は私を見ると笑顔で手を振ってきた。


「お帰り、加藤さん。」


「あ・・た、ただいま。」


先程の川口さんの台詞を思い出し、妙に照れ臭い気持ちになってしまった。


「今日はこのまま帰るの?それとも何か買い物でもしていくのかな?何所でも付き合うよ。


川口さんはニコニコしながら尋ねてきた。


「うん。実は・・前に私に教えてくれたでしょう?買ったコーヒー豆を挽いてくれるカフェが駅の傍にあるって。そこへ行ってみようかと思っているんだけど・・・。」


「ああ、あの店に行くんだね?よし、それじゃ行こう。俺もコーヒーを買いたいと思っていたんだ。」


そして私達は一緒にカフェへ向かった―。




「う~ん・・・どのコーヒーがいいのかな・・?」


店の中で私はガラスケースに入れられているコーヒー豆を見ながら悩んでいた。大体考えてみればいつも私はスーパーで売っているコーヒーしか買ったことが無かったから銘柄を見てもさっぱり分らない。

一方の川口さんは買い慣れているのか、すぐに豆を選んで挽いてもらっていた。そして今はお店に並べられているマグボトルを眺めていた。



「加藤さん、決まった?」


悩んでいると川口さんに不意に声を掛けられた。


「う~ん・・・それがさっぱり分らなくて・・私にはどれも同じに見えちゃうんだよね。」


「そうか・・それなら無難なところで『マイルドブレンド』にしたらどうかな?」


「うん。そうだね。そうするよ。」


そこで私は200g買って、早速挽いてもらった―。




 お店からの帰り道・・川口さんと並んで歩きながらコーヒーについて色々話をした。川口さんはコーヒーについて詳しくて驚いてしまった。


「そんなにコーヒー通ならひょっとして家でも豆を挽いて飲んだりしてるんじゃないの?」


私が尋ねると、川口さんが頷いた。


「そうだよ、休みの日は自分で豆を挽いて飲んだりしてるよ。」


「へ~・・すごいね。きっと美味しいんだろうね。」


何の気なしに言葉に出すと川口さんが言った。


「あの・・さ、それなら今度・・俺の家にコーヒー飲みに来ない?」


「え?」


突然の申し出に驚くと川口さんは焦ったように言う。


「あ・・だ、駄目だよな。1人暮らしの男の家に呼ぼうとしたんて・・どうかしてた。ごめん、忘れていいよ。」


「川口さん・・・。」


でも、川口さんが淹れてくれるコーヒーを飲んでみたいのも事実だ。


だから私は言った。


「それなら・・・。こういうのはどう?」


私は川口さんにある提案をした―。






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