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第13章 25 3人の奇妙な食卓

「お、お姉ちゃん・・・何も泣かなくても・・。」


私にすがって泣くお姉ちゃんに戸惑ってしまった。


「鈴音ちゃんが時々急に眠くなって寝てしまうって話は服部さんに聞いていたから知ってはいたけど・・・まさかあんな突然眠りにつくなんて思いもしなくて・・あまりにも突然だったからほんとに怖くなって・・・。」


お姉ちゃんは泣きながら言う。


「ほ、本当に大丈夫だから・・心配しないで?来週病院に行って検査してもらうし・・。こんな事今は日常茶飯事だから。」


「だけど・・・。」


「本当に平気だってば。それよりも・・服部さんは?」


すっかり薄暗くなった窓の外を眺めながらお姉ちゃんに尋ねた。


「服部さんならもうとっくに帰ったわよ?」


「え?そうなの?」


「今何時なのかな?」


「えっと・・・18時15分よ。」


「え?!もうそんな時間?た、大変!帰らなくちゃ。」


慌ててソファから降りるとお姉ちゃんが引き留めてきた。


「待って!鈴音ちゃんっ!」


「え?何・・・?」


「一緒に・・夜ご飯食べましょうよ。キーマカレーを作ったのよ?亮平君にも電話入れたんだから。」


「え・・?りょ、亮平・・・にも・・?」


私は耳を疑った。嫌、冗談じゃない。今更亮平と会うなんて御免だ。


「ご、ごめんなさい。私、本当に帰らないと・・。ま、また連絡するから・・っ。」


床に置いていたショルダーバックを肩に引っ掛け、慌てて玄関へと向かう。


「待ってよ!鈴音ちゃんっ!」


その後ろをお姉ちゃんが追いかけてくる。そして・・。


玄関に出て、ドアノブに触れた時・・・。


ガチャリ


突然ドアがガチャリと開かれ、私の目の前にはYシャツ姿の亮平が立っていた。


「す・・・鈴音・・?お前、いったいどこへ行くつもり・・・。」


「・・・。」


だけど私はその言葉を無視し、亮平の脇をすり抜けて外へ出ようとして・・左手首を掴まれた。


「おい、鈴音!返事しろよ・・。」


その力の強い事・・・。


「い・・痛いよ・・亮平・・」


思わず顔をしかめて抗議する。すると背後でお姉ちゃんの声が聞こえた。


「亮平君っ!鈴音ちゃんの手を放してっ!」


「あ・・し、忍・・・さん・・。」


亮平は声を詰まらせると、私の手首を離した。え?忍さん・・?聞き間違いだろうか?私は驚いて亮平の顔をみあげる。けれど、亮平は何も答えずに私を黙って見下ろしている。

すると背後でお姉ちゃんの声が聞こえた。


「お願い、鈴音ちゃん。夜ご飯・・・食べて行って・・・?」


懇願するお姉ちゃんの声に・・私は従うしかなかった―。




「さあ、皆で食べましょう!」


お姉ちゃん1人が楽し気にしている中、久しぶりに3人一緒の食事が始まった。

私の隣にはお姉ちゃんが座り、お姉ちゃんの向かい側には亮平が座っている。


「鈴音ちゃん・・・本当にこんなにガリガリに痩せてしまって・・・。ほら、サラダも食べて。」


お姉ちゃんは私の取り皿にサラダをトングですくって取り分けてくれる。


「あ、ありがとう・・・。」


「あ、ほらほら。亮平君も遠慮しないで沢山食べてね。好きだったでしょう?キーマカレー。」


「え、ええ・・そうですね。好きですよ。」


何故か亮平はぎこちなく敬語を使って話す。何故?2人は恋人同士だったでしょう?どうして以前のような関係に戻っているの?

私は混乱する頭の中、お姉ちゃんが何か話しかけているのもろくに頭に入ってはこなかった。ただ・・・適当に相槌を打っていた―。



 午後8時―


「鈴音ちゃん・・・本当にマンションに帰るの?」


お姉ちゃんが寂し気に玄関に立っている。


「う、うん・・・。明るいうちに出てきたから・・・マンションの様子が気になって・・・洗濯物も出しっぱなしだし・・・。」


玄関で靴を履きながら言う。すると亮平が声を掛けてきた。


「俺が車で送るよ。」


亮平―!

その声にビクリと肩が跳ねてしまった。


「そうね。お願いしようかしら?」


「はい。任せてください。」


「ちょ、ちょっと待ってっ!私は何も言ってな・・!」


しかし、そこには真剣な目で私を見る亮平が立っていて・・・思わず口を閉ざしてしまった。


「行くぞ、鈴音。」


「う。うん・・・。」


私はつい、うなずいてしまった―。







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