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第2章 11 姉と私と亮平の涙

 お姉ちゃんの様子を伺い、私は部屋のドアを閉めると階下に降りた。リビングルームには亮平が頭を押さえてソファの上に座っている。


「亮平。」


私がそっと名前を呼ぶと、亮平は素早く頭を上げて私を見た。


「どうだ・・?忍さんの様子は・・・。」


「うん・・・始めのうちは・・大分興奮して・・泣き叫んでいたけど・・今はもう泣き疲れて眠ってる。多分一睡もしていないんだと思う・・。」


そして私も亮平の隣にすわり、ため息をついた。



 それは突然の出来事だった。

姉と進さんは2人でデートをしていた。交差点で信号待ちをしていて、信号が青になったので渡って歩いていたら、そこへ1台の車が猛スピードで突っ込んできた。進さんは咄嗟に姉を突き飛ばし・・・姉の目の前で車に轢かれてしまった。そしてあろう事かその車はそのまま走り去ってしまった・・・。ひき逃げだったのだ。

辺りは騒然となった。

取り乱した姉を周囲にいた人たちが何とか落ち着かせ、すぐに救急車が呼ばれた。

進さんは救急車で運ばれ、突き飛ばされた事で怪我をした姉も同じ病院に運ばれた。


車に轢かれた進さんは5時間にも及ぶ手術を受けたものの、結局助からなかった。

一方の姉は打撲の治療を受けた後、進さんの両親と手術が終わるのをずっと待っていたが、手術を終えた医師から進さんが帰らぬ人となった事にショックを受け、気を失ってしまい・・私とは一切連絡が途絶えてしまっていたらしい。

そしてやっと目を覚ました姉は進さんの両親に言われ、帰宅してきたのだった。


「信じられないよ・・・。進さんが・・・死んでしまったなんて・・・。」


私は震えながら言った。

何て可愛そうなお姉ちゃん。お父さんもお母さんも死んでしまって苦労して・・私の面倒を見てくれて、進さんという恋人が出来てようやく今年結婚して幸せになるはずだったのに・・・。


「俺が悪いんだ・・・。」


亮平が口を開いた。


「え・・?何が悪いの・・?」


一体亮平は何を言っているのだろう。


「俺が・・・忍さんの事を好きだったから・・・忍さんの恋人の事を妬んで・・。」


亮平が頭を抱えた。


「ちょっと・・・亮平、落ち着いて。」


私は亮平の肩に手を置いた。


「そうだ・・俺は願った事もある。あいつなんかいなくなってしまえばいいのにって・・。俺がそんな事を願ったから・・・あの人は・・・っ!」


「亮平っ!」


パンッ!!


私は亮平の頬を叩いた。


「鈴音・・・?」


亮平は呆然と私の顔を見た。


「自分のせい?進さんがいなくなってしまえばいいのにって願ったから?ふざけないでよっ!」


いつしか私は泣いていた。


「進さんが死んでしまったのは・・・車に轢かれたから・・・そして轢いた相手は逃げたのよっ?!亮平のせいじゃないっ!進さんは・・・殺されたんだからっ!だから私達に出来る事は・・ひき逃げ犯を捕まえて・・・罪を償わせる事よっ!そして・・お姉ちゃんの笑顔を取り戻す事なんだからっ!」


気付けば私の顔は涙でグチャグチャになっていた。亮平も泣いていた。

私と亮平は・・・2人で抱き合ったまま、涙が枯れるまで泣き続けた―。



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