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第13章 18 ケースワーカーとの初めての電話

「お、お姉ちゃん・・・。」


いつしか私の目からは涙が零れ落ちていた。進さんが死んで・・・お姉ちゃんがおかしくなってしまってから、初めてかけられた僅かだけど温かいメッセージ。それを読んだだけで、今までのお姉ちゃんから受けた仕打ちが・・辛かった記憶が和らいでいく。私は・・・あんな目に遭っても・・心の内で私の事をどう思っていたか知ってしまっても・・やっぱりお姉ちゃんの事が大好きなんだ。だって例え血は繋がっていなくても・・両親を亡くしてしまった私達にとっては、かけがえのない肉親なのだから。


 会いたい。会って・・・ちゃんと話がしたい。そして・・謝りたい。私は無意識のうちにお姉ちゃんから色々な物を奪っていたんだ。お父さん、お母さん・・・そしてお姉ちゃんの言葉がもしも真実なら、進さんの心を・・・。

その為にもまずはお姉ちゃんにメールを打つ前に、先にケースワーカーさんから話を聞いたほうがいいかもしれない。


 私は立ち上がると、家事の続きを再開した―。



 あれこれ家事をしていると、時刻は9時になったので早速私はスマホを手に取ると、渋谷にある保健センターに電話を掛けた。


トゥルルルルル・・・


何回目かのコール音の後、電話がつながった。


『はい、こちらは渋谷区区民センターでございます。』


女性の声で応答があった。


「あの・・保健センターに在籍されるケースワーカーで服部さんという男性の方はいらっしゃいますか?」


『服部・・・ですか?では保険センターに電話を回しますので、お名前を教えていただけますか?』


「はい、私は加藤忍の妹の加藤鈴音と申します。姉が服部さんという方にお世話になっているそうなので一度お話を伺いたいと思ってご連絡させて頂きました。」


『はい、では少々お待ち下さい。』


そこで電話は一度保留音になり、受話器越しから『カノン』の曲が流れ始めた。そして少し待った後、電話が切り替わった。


『お待たせ致しました。加藤様ですね?こちらは保健センターでございます。』


続いて受話器越しから聞こえてきたのは男性の声だった。


「あの、こちらに服部さんというケースワーカーの方はいらっしゃいますか?」


『はい、おります。少々お待ち下さい。』


すぐに電話は別の男性の声に変った。


『もしもし、お電話変わりました。服部です。』


「あの、私・・・加藤忍の妹の鈴音と申します・・」


『ええ、お話は忍さんから伺っています。すみません、お電話をいただいてしまって・・・。本当ならこちらから一度ご連絡を差し上げなければならなかったのですが・・。』


電話口からは感じのよさそうな男性の声が聞こえてくる。


「いえ、とんでもございません。私の方も色々ありまして、すっか連絡を入れさせていただくのが遅くなってしまいまして・・。」


すると服部さんが言った。


『ええ・・・。知っています。交通事故に遭われたのですよね・・?赤信号で横断歩道に出てしまった忍さんを助けるために・・。』


「はい・・・。」


『大変でしたね・・3か月近く目を覚まさなかったと聞いています。忍さんと同じ病院に入院されていたので、噂で聞きました。』


「それで・・・姉の事について色々伺いたい事があるのですが・・。」


すると服部さんが言った。


『実は、本日午後2時から忍さんの家を訪問することになっているんです。なのでその前に一度お話をさせていただきたいのですが・・ご予定はいかがでしょうか?」


「はい、予定なら・・何もありません。よろしくお願いします。」


それは願ってもいない申し出だった―。




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