第13章 13 突然の告白
２人で日本酒を１本だけ飲んで、私と川口さんは焼き鳥屋さんを出た。
ほんの少ししか飲んでいないのにも関わらず、私の足はもうふらついていた。
「大丈夫？加藤さん。」
川口さんが心配そうに声を掛けてきた。
「うん、平気平気・・。やっぱり数カ月ぶりにお酒飲んだからかな・・？」
その時・・・・。
グイッ
突然力強く肩を掴まれた。
「え？あ、あの・・。」
戸惑っていると川口さんが言った。
「１人で歩いていると危ないから・・・肩、貸すよ。」
「あ・・・ありがとう・・。」
川口さんに肩を抱かれたまま、私達は無言で歩き・・やがてマンションの前へとやってきた。
「着いたから・・帰るね。」
その時・・・。
「何してるんだよ？」
いきなりマンションの陰から声が聞こえ、ふらりと現れたのは亮平だった。
「え？りょ・・亮平・・？」
ひょっとして私はかなり酔っているのだろうか？思わず両目をゴシゴシ擦っていると亮平がこちらに鋭い視線を投げつけてきた。
「おい、お前・・・性懲りも無く・・。鈴音から離れろよ。」
「・・。」
しかし川口さんは私の肩を引き寄せたまま、返事をしない。
「お前・・・鈴音は病み上がりなんだ。勝手に連れ出すんじゃない。」
「・・！」
その時、川口さんが息を飲む気配を感じ・・スルリと私の肩から彼の手が離れた。
「鈴音、こっちに来い。」
亮平が近づいてきて、気付けば右腕を掴まれていた。その力が意外に強くて思わず顔が痛みで歪んだ。
「おい！乱暴に腕を掴むなっ！」
川口さんが険しい声で亮平に言う。
「・・・悪い。」
亮平はがボソリと言い、腕を掴む力を緩めた。そして改めて川口さんを睨み付けると言った。
「もう二度と鈴音に近付くなって言っただろう？お前・・一体どういうつもりなんだよっ！」
亮平はここが住宅街で夜だと言うのに声を荒げた。
「や、やめて・・亮平。ここは・・住宅街だから・・。近所迷惑になっちゃうよ。」
何とか亮平を落ち着かせようとすると、川口さんが口を開いた。
「どういうつもりだって？そんなのは決まっているだろう？俺は加藤さんが好きだから、今夜も彼女を誘ったんだ。」
「え・・？」
まさか、いきなり亮平の前で告白をしてきたので驚いて川口さんを見てしまった。
すると川口さんは私を見て言う。
「加藤さん、俺は加藤さんの事が好きだ。ずっとそばにいたい。・・俺と付き合ってくれないか？」
すると亮平が口を挟んできた。
「は？！お前何言ってるんだ・・？ふざけるなよっ！」
そして私を見ると言った。
「鈴音。あんな男の言葉に耳を傾けるな。それよりお前に大事な話があるんだ。とりあえずお前の部屋に行こう。」
「幼馴染か何だか知らないが・・何でお前が答えるんだ？俺は加藤さんに尋ねているんだよ。」
そして川口さんは私をじっと見つめると言った。
「加藤さん・・答えてくれないか？俺は君が好きだ。・・付き合って欲しい。」
「！」
そんな事・・いきなり言われても・・。答える事が出来ずに俯くと亮平は勝ち誇ったように言った。
「ほら見ろよ。鈴音のこの反応で良く分かっただろう？お前の告白に鈴音は困ってるじゃないか。行くぞ。」
亮平は強引に私の腕を引っ張るように連れて行こうとする。その強引なやり方にもう私は我慢出来なかった。
「離してっ！」
バッ！
亮平の手を振り払った。
「鈴音・・？」
亮平が戸惑った様に私を見る。私はその視線を振り切り、川口さんを見ると言った。
「ごめんなさい。」
「え・・？」
「川口さんの気持ちは・・・嬉しいけど・・でも私・・そんな目で川口さんの事・・・見た事無くて・・本当にごめんなさい。」
そして頭を下げた後、次に亮平を見た。
「亮平・・亮平はお姉ちゃんの恋人なんだから・・私には構わないで。お姉ちゃんの話しなら・・・笠井先生から聞くから。」
もう頭の中がグチャグチャだった。とにかく今は・・１人になりたかった。
私は戸惑う２人を残し・・逃げるように自分の部屋へ向かった―。
