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第12章 13 亮平の為に

「大丈夫だよ・・・私は死なないから・・来週MRIの検査も受ける事になっているし・・。」


「そ・・そうか・・・?」


亮平は涙ぐんでいた目を拭うと言った。


「鈴音・・お前の邪魔はしないから・・面会時間までは・・傍にいさせてくれよ。頼む。」


「亮平・・・。」


分らない。亮平が何故そんな切なそうな目で私を見るのか・・・亮平がそんな目を向けるのはこの世でただ1人、お姉ちゃんだけだったはずじゃなかったの・・?だけどお姉ちゃんの状態の方が私は心配でたまらない。多重人格・・本当のお姉ちゃんはどうなったのか?私を憎むお姉ちゃんを・・消す事が出来るのだろうか・・・。


「それじゃ・・亮平・・お願いがあるのだけど・・・。」


「うん?何だ?」


亮平が身を乗り出して来た。


「お姉ちゃんの・・・ところに行って来て・・・。」


「鈴音・・。」


すると何故か亮平の顔が曇った。え・・?何?今の表情は・・・もしかして・・。


「ね、ねえ・・・もしかして・・お姉ちゃんに何かあったの・・?」


「い、いや・・。何も無い。」


「そう・・・?なら・・・お姉ちゃんの面会に行ってあげて。それで・・・お姉ちゃんの様子を教えて?」


「・・分かったよ。それじゃ・・忍の所へ・・行って来るよ。」


「うん・・宜しくね。」


「ああ・・。」


亮平は小さく頷くと立ち上がって部屋を出て行った―。




 亮平が部屋を出て行って、私は暫くぼんやりと天井を眺めていた。・・それにしても退屈だな・・・。いつになったらリハビリが始まるんだろう。最近ようやく自分で寝返りも打てるようになったし・・・・。そこまで考えていたら、また少し眠くなってきた。多分・・亮平はずっとお姉ちゃんに付き添っているだろう。多分亮平は

私が交通事故に遭った事・・・半分自分を責めている気がする。だから私のお見舞いに来ているのだと思う。本当ならお姉ちゃんに付き添いたいはずなのに・・だから私の方が気を利かせて・・・。そこまで考えた時・・・私は再び眠りに就いた―。




 どの位眠っていたのだろうか・・。何やら部屋の中が騒がしい。


「・・だから!いつまで鈴音はあんな状態だって聞いているんだよっ?!」


「落ち着いてください・・ですから来週検査をするんですよ。」


看護師さんの声が聞こえてくる。


「・・だけど・・っ!え?す・・・鈴音っ?!」


突如亮平が私の名を呼ぶ。


「大丈夫かっ?!目・・・覚めたのかっ?!」


亮平が駆け寄って来ると私の顔を覗き込んできた。え・・?い、一体何事なの?


「亮平・・・?一体どうしたの・・・?」


すると見る見るうちに亮平の目に涙がたまって来る。


「す・・鈴音・・・。頼むから・・心配させないでくれよ・・。」


「な、何で・・?私、そんなに心配かけさせてるかな・・?」


すると亮平の相手をしていた看護師さんがベッドまでやって来ると言った。


「加藤さん・・6時間も眠ったままだったそうですよ。」


「え?ろ・・・6時間も・・?」


「ああ、そうだ。鈴音・・お前・・・ちっとも起きなくて・・・それで看護師を呼んで話をしていた処だったんだ。良かった・・目が覚めてくれて・・・。」


「そう・・。ごめんね・・・心配かけさせて・・。」


私はこの時ほど亮平に申し訳ないと強く感じたことは無かった。きっと面会に来るから・・私の心配をしてしまうんだ。


「それでは、加藤さんも目を覚ました事ですし・・私も行きますね。」


そして看護師さんは部屋を出て行った。



「ね・・亮平。」


「どうした?鈴音。」


ようやく落ち着いた気持ちになったのか亮平が返事をした。


「私が・・・もっと身体を動かせるようになるまでは・・面会には来ないで。」


「!」


亮平の息を飲む気配が伝わってきた―。

  



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