深夜3時。コンビニでサラリーマンにジョブチェンする夢を見る。
あーあ、次は何にチェンジしようかな。
俺は今、あの名作のシリーズのゲームを久々にやり直している。ジョブチェンジができるこのゲームは一つのジョブを極めると技が他の職業でも使えるから、ジョブチェンジしまくってる。
でもとりあえず、腹減ったからコンビニ。
うちの近所のコンビニに食料の買い出しに行く。今日はおにぎりと炭酸飲料でいいや。
「こちら温めますか?」
はいって言いかけて、「え!?」と声を上げる。
よくよく見たら、飲み物の方じゃねえか。とんでもなくボケてやがるな、この店員。
お、顔を見ると可愛い。
当たりじゃん。ラッキー……って、深夜にこんな若い女の子がバイトしてていいのかよ。
っていうか、俺このコンビニのバイトの面接受けたら、落ちたぜ。
あの店長、絶対顔で選んでやがる。
でも、店員が女子ってのはポイント高いな。うん。
そろそろ、ジョブ変えなきゃな。
商人は速攻ジョブ変えた。つまらん。
勇者は、はじめだけだったな。
吟遊詩人もやった。シーフ、これやると足が速くなる。なかなか使えるジョブ。
とりあえず今はすっぴんだけど、早く次のアビリティ覚えたいしな。
あー、次どうすっかな。
あ! これいいジョブじゃない?
時間かかるけど極めたら、俺マジつえー!
それからの俺は、深夜のコンビニにマメに通うようになった。
ジョブチェンのためには、やりこまなきゃならないから、食料大事。
ついでに、下見。
女の子の店員なんて、マジでラッキー。しかもこの娘話しやすい。この時間、ほかの店員が休憩っていうのもポイント高いね。この時間は、二人っきりになれるってことだよ。最高だね。
で、一か月くらいしたら、いきなりその子がバイト辞めるってよ。
マジか!
え? ちょっと待って、彼女、俺のこと、好きっぽいこと言ってるよ!? マジで!???
俺、ちょっと舞い上がった。
いや、確かにあの子可愛い。付き合えたらそりゃ幸せだろうな。
でも……。
無理だ、今の俺には無理だ……。
今の俺、ただのすっぴんだもん。
いくらブラック企業でも、辞めなきゃよかったかもなあ。
俺は泣く泣く涙を呑んで、次の週はコンビニに行かなかった。
俺、その週こそは新しいジョブにチェンジしようと思ってたんだ。下見も終えたし。でもさすがにね、自分を好きだって思ってくれている子を、襲えないでしょ?
え? 俺の次のジョブは何にしたのかって?
そりゃ、伝説の盗賊――強盗でしょ?
彼のジョブチェン歴→商人=サラリーマン(ブラック企業)勇者=自衛隊員(続くわけがない)吟遊詩人=ホスト(売れるまでがね……)シーフ=空き巣(ジョブ?)現在はすっぴん=……。目指したジョブは盗賊=極めるのに時間がかかる。最高ランクは強盗。順位はコンビニ強盗→銀行強盗(もはや犯罪)