第22話 異変・4
それから少し経ち、主は落ち着きを取り戻した。
そして、ムクリと起き上がりベッドの上に座った。
「ゴブタ君、私実は色々と隠している事があります」
「ええ、まあそれに関しては大分前から気付いてました」
そう俺が言うと、主は「えっ!?」と驚いた声を上げた。
いやだって、偶に癖なのか変な行動をする時があったし、そもそもこんな高い宿に新米の冒険者が止まる筈がない。
「な、何で隠してるって分かったの?」
「いや、新米の冒険者がこんな良い宿に泊る訳ないでしょ? 貴族の娘が冒険者になって、安宿は止まれ内的な感じで、この宿を見つけてお金の殆どを使って泊ってると思ってました」
「うぐっ!」
主は図星を突かれた様で、ベッドに倒れてしまった。
「そもそも、主が来ている服とかだって高価な物ですから、平民の方じゃない事分かってましたよ」
「ご、ゴブタ君が察しが良いのは分かってたけど、まさか貴族って事バレてたなんて……まあ、でもゴブタ君には何れ話すつもりだったから、いい機会だし今日全部私の事話すよ」
主はそう言うと、自分の事、今まで隠していた事を話してくれた。
まず一番最初に驚いたのは、主は偶にこの世界に現れる〝転生者〟という人でスキルが沢山あるのもそのおかげだと聞かされた。
「成程、だから2つの魔法スキルに使役の魔法も使えたのですね」
「うん、向こうの世界で死んで神様に異世界に転生させてあげるって言われた時に、魔法と魔物と仲良くなれるスキルが欲しいって頼んだの」
そして、更に主はこの世界での自分の出生も話してくれた。
主はこの国の公爵家の娘として生まれ、これまで苦労した事のない人生だと話した。
それは転生者であるおかげで、人の言葉を幼少期から理解して、ある程度の才能も既に持っていたからだと言われた。
「でも、やっぱり大きくなるにつれて周りとの差って、そんなに無くなっちゃうんだよね……」
主の年齢は12、この国の決まりで12歳からは学園に通う制度がある。
勿論、主も学園に通っていたのだが周りとの才能の差に落ち込み、少し前に学園に休学申請をして家出をしたと主は言った。
「成程、学び舎で周りとの差に落ち込み、逃げ出して冒険者になったんですね」
「改めて言われると、心に来るね……まあ、でもそんな所かな、お父様達も多分私が王都に居る事は知ってるし、冒険者になってる事も知ってると思うの」
「連れ戻されたりはされてないんですか?」
「しなくても、その内戻ってくると思ってるんだと思う。だって、戦う才能も頭が良い訳でもない私がずっと暮らせるわけないって、お父様達も知ってると思うから」
主はそう少し、悲しそうな表情で言った。
俺はそんな主の前に立ち、手を取り片膝をついた。
「今の主には俺がいます。戦う才能なら、今から伸ばせば良いです。勉学だって、努力すればいずれ身に付きます。なので、俺と一緒に主も強くなりましょう」
「ゴブタ君……」
俺の言葉に主は、泣きそうな顔をして、そのまま涙が出て来て俺を抱きしめて泣いた。
そして、暫くして主は泣き疲れて眠ってしまった。
「……予想通りと言えば、予想通りだけどまさか転生者だったとはな」
本の知識では知っていたが、まさか自分の主がその人とは思わなかった。
まあ、でも転生者だろうと、主は主だ。
いずれ主が学園に戻ると言った時、周りに馬鹿にされないように俺も頑張ろう。
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