第2話 出会い・2
戦闘行為が出来ないが、武器はちゃんと持っていた。
それは俺が幼き頃から、ずっと愛用している【魔物武器】の棍棒。
ゴブリン種が持っている武器の一つだ。
【魔物武器】は持っている魔物と、持っていない魔物が居る。
ゴブリンの様に人型の魔物は持っている事が多くあり、逆に目の前に居るウルフの様な魔物は持っていない。
まあ、生まれ持っていない者でも後々武器を自分の武器として認め、長い時間が経てば【魔物武器】となる。
俺の場合、主から新しい武器を買って貰う事は無かったから、幼き頃から持っている棍棒が俺の武器だ。
「そんな、棒っきれで俺の攻撃を受けキレられんのかッ!」
ウルフは後ろ脚に力を入れ、凄い脚力で俺へと襲い掛かって来た。
その攻撃に対して、俺は両足に力を入れ左手で持ち手の部分を持ち、ヘッドの所に右手を添えてウルフの攻撃を防いだ。
「これは玩具じゃないぜ、いつまで咥えているんだ?」
「ハフフフ!」
棍棒が奥歯に挟まり、前足が浮いた状態で可愛らしくウルフは吠えた。
そんなウルフに対して、ウルフの腹部へと蹴りを入れその勢いで口から外れた棍棒を横に振り、ウルフを右方向へと吹き飛ばした。
「キュインッ!」
丁度、木があって勢いよくウルフは叩きつけられ、可愛らしく鳴いた。
腹部と背部に衝撃を与えられたウルフは、立ち上がれずグッタリとしていた。
そんなウルフに対して、俺はウルフへと近づいて行き止めをさそうとした。
「ゴブリンさん! 待ってください!」
主の命令で振り下ろそうとしていた棍棒は、空でピタッと止まった。
観念していたウルフも、いつまでも棍棒が降りてこずゆっくりと目を開け俺と目が合った。
「えっと、その今回は見逃しませんか?」
「……」
「……」
主である少女の言葉に、俺とウルフ〝何言ってんだ?〟という感情で主を見つめた。
いやいや、魔物がここまで弱っていて倒さず見逃すって……
「主、今何を言ってるのか分かっていますか?」
「あっ、えっとですね。ほら、私達は怪我してませんし」
主はオドオドとしながらそう言って、チラッチラッと俺の方を見て来た。
ああ、こういう主なのか、よくわかった。
「主がああ言ってるから、今回は見逃す。次会う時までに、あの主の考え方を変えておくから次は無いと思え」
「……天然であれなら変わるのも相当苦労が居るだろうな、まあ借り一つと思って今回は去る。またな、小鬼」
ウルフはそう言って、俺達の下から離れ、フラフラとした足取りで森の奥へと消えて行った。
そして主である少女と二人になった俺は、主の方を見つめた。
俺は、深く溜息をついてから主と話し合いを始めた。
「主がやった事は、危険な行為という事は理解してますか?」
「うっ、で、でも!」
「でも、じゃないですよ。今のは、相手が一匹で尚且つ頭が良いウルフだったから問題は無かったです。ですが、考えもしない魔物だったら俺達は殺されていた所なんですよ?」
今のは、本当に危ない事だった。
ウルフの奴が、頭が良く命を大切にしていたからこそ、俺も主も無事だったが、あれが普通の魔物だったら俺達は殺されていた可能性のが高い。
戦闘が出来る俺を命令で戦闘行為を禁止して、主もウルフに接近していた。
「だって、狼さん可愛い目してたから……」
「……取り敢えず、主の考え方がおかしいという事は理解できましたよ」
助けた理由がウルフが可愛いと、何とも常識外れの回答に俺は呆れた。
まあ、そんな考えを持つ従魔使いも居るが、見逃すという選択を取る者は居ないだろう。
「うっ……あの、所でゴブリンさん」
「はい、なんですか主」
「どうして、私を助けてくれたんですか? それと、その首輪って従魔さんが持っている物ですよね? ゴブリンさんって、他の誰かの従魔さん何ですか?」
主は怒られるのが嫌だったのか、無理矢理話題を変えて来た。
「助けたのは偶然ですよ。悲鳴が聞こえて、やってきたら少女とウルフが対峙していたので加勢に入ったんです。まあ、主が従魔使いだったからという理由が大きいです。それと、この首輪ですが前の主が付けたまま契約を破棄したせいで、つけたままになっているんです」
「えっ、付けたままってギルドで正式な手続きをやってないの!?」
流石、従魔使いのローブを羽織っているだけある。
魔物との戦闘行為については常識が無かったが、その辺の事は知っているみたいだ。
「ええ、この森で数日前に主の機嫌を損ねてしまい、契約を無理に破棄されました」
「えぇ!? それって、従魔使いがやったら駄目な事だよ!」
「そうですね。なので、どうにか交渉しようと思いましたが攻撃を仕掛けられ、元の主が逃げたんです。そこからは、この首輪の能力で戦闘行為も出来ないので魔物や人間から逃げていました」
「ゴブリンさんも大変だったんだね……」
主は俺の話を聞いて、ポンポンと俺の頭を撫でた。
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