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第1話 出会い・1


「ハァ、ハァ、ハァ……」


 森の中、俺は息を切らしながら走っている。

 俺は、魔物の鬼種と言われている種族の一番弱い種族として知られているゴブリン。

 しかし、野生のゴブリンではない、俺は〝元従魔〟だ。


「無能なゴブリンをいつまでも飼ってるのも恥ずかしいから、お前はここで置いて行く」


 数日前に主だった男から突然そう言われた俺は、主との契約を一方的に破棄された。

 本来、従魔を解放するには大きな街等にある【冒険者ギルド】で、手続きをしないといけない。

 しかし、俺の主は森の奥で他の仲間に見つからない様に、俺との契約を破棄して、更に魔法で攻撃をして来た。

 交渉の余地かないと理解した俺は、魔法が当たって怪我をした手を庇いながら走り逃げ去った。


 そして現在、狼種の普通のウルフに追われていた。

 相手は一匹、どうにかすれば倒せる相手だが、俺には〝戦闘行為〟事態する事が出来ない。

 それは、俺の首に付いている【従魔の首輪】のせいだ。

 この首輪には、〝主の命令外の戦闘行為の禁止〟という制約が付けられている。

 その為、俺は捨てられてから数日間魔物から、人から、全てから逃げている。


「……諦めたか?」


 木の上に身を潜めていた俺は、ウルフの気配がなくなった事を確認して木の上で警戒を解いた。

 まだ一匹に追われるのは余裕だ。

 逃げ方も大分覚えたし、元々木登りや走る事は得意だったから逃走に応用している。

 しかし、これが複数体となると先回りだったり、連携して居って来るから一瞬も気を許す事は出来ない。


「はぁ……あの主もこんな森の中で捨てなくても良いだろ……それに無能って、お前が世話をしないほかの従魔達の世話は俺がしてただろ……」


 俺の主は、優秀な従魔使いだった。

 最初の従魔は人型が良いと教えられたらしく、まだ野生のゴブリンだった俺を捕まえ従魔にした。

 なった当初は、まだ主も成り立てで好青年に見えた。


 しかし直ぐに主は、変わってしまった。

 才能が有り強い魔物を従える様になった主は、俺を雑用係としてか見なくなった。

 それから3年間、色んな理不尽な命令にも耐えて来た。

 しかし、数日前に主の枕を忘れた俺は、森の奥で契約を破棄された。


「我儘な主から解放されたのは良かったけど、された場所が最悪だったな……」


 悪態をつくが、この現状が変わる訳でも無い。

 どうにかして生き延びて、この首輪を外すか新しい主を探す必要がある。


「新しい主か……次は、主が弱くても良いから優しい主が良いな……」


 そんな未来を願っていると、この森での生活中に聞いた事が無い女性の悲鳴が聞こえた。

 他の人の声は聞こえない、という事は森を一人で歩いていた人の声か?


「取り敢えず、確認だけ……」


 人の声が聞こえた時、この数日間ずっと逃げていた。

 しかし、今の声を無視して何処かに行けるような性格ではない。

 助けにならなくても、一緒に逃げる事は出来るだろう。

 そう思って、悲鳴がした方へと向かった。


「お、狼さん。な、仲良くな、なりませほんか?」


「グルルル」


 悲鳴がした場所に辿り着くと、見覚えのあるローブを身にまとった少女が一匹のウルフに睨まれていた。

 あのローブは、確か〝従魔使い〟のローブ! という事は、あの子は従魔使い!


「それにあのウルフは、俺を追いかけていたウルフじゃないか……」


 それはつまり俺がここまでウルフを連れて来てしまったせいで、女の子とウルフが対面する事になってしまった。

 そんなのを見なかった事に何て、出来る筈もない。

 俺は、戦闘行為が出来ない癖に少女の前へと出てウルフと対面した。


「えっ、ゴブリンさん!?」


「グルルル、お前はさっき逃げた小鬼じゃねえか! また会えて嬉しいぜ!」


 少女は俺の登場に驚き、ウルフは獲物が増えて嬉しそうにそう吠えた。

 俺はそんなウルフから目を離さず、後ろにいる少女に話しかけた。


「そのローブは、従魔使いのローブだよな? という事は、あんたは従魔使いか?」


「は、はひ! 成り立ての新米従魔使いです! なので、まだ従魔は居ません!」


「そうか、なら丁度いい。俺に【従魔の契約】をしてくれ、見れば分かると思うが俺は元従魔だ。分け合って、捨てられたせいで戦闘行為が出来ない」


 従魔使いと確認出来た俺は、少女に向かってそう言った。


「え、えっと……分かりました! よろしくお願いしますゴブリンさん!」


 少女は一瞬考え、今この場での最善策がこの契約だと理解して俺に向かって【従魔の契約】を行った。

 俺はその魔法を拒まず受け入れ、主となった少女に戦闘の許可を取る事にした。


「主、戦闘行為の許可を」


「はい! ゴブリンさん、戦ってください!」


「ッ!」


 少女に指示により、これまで身体能力までも奪っていた首輪の力が解放された。

 これでも3年間、我儘な主の下で色んな雑用をしてきた。

 それは魔物との戦闘も含めてだ。


「追いかけっこは楽しかったぜ、ワンコロ。こっからは戦いと行こうか」


「ハッ、待ってやったのに礼も無しか? 小鬼風情がッ!」


 

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