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徒然怪奇  作者: 飛鷹 旋利
3/8

乗り物に乗るとき気をつけてること(後編)

昔、学童の仕事をしていた。


大体昼から夜までで、お迎えが遅れれば、それだけ帰りの時間も遅くなった。


その日も、時刻は夜の7時になろうとしていた。


冬の夜は日の暮れが早い。

自転車通勤だった私は、最後のお迎えを送り出した後、戸締まりをしてから、自転車を漕ぎ出した。


周りはもう真っ暗だった。辺りには民家もまばらな田舎。

街灯すら近くにはない。


あるといえば、その辺りは、田んぼ、畑、かかしと・・・・

そう。

そのかかしの前も、闇夜では人のようで嫌で通りたくないのだけど、私にはもっと通りたくない場所があった。


それは墓場だ。


(いやだなぁ)


慣れてはいるから、あえて気にしないように、何も考えないように走ってはいても、暗闇の墓地はやはり妙に意識せずにいられないほどに不気味な空気に満ちている。


私は、気合を入れて墓地のある道を平然としたふりをして通り過ぎようとした、のだが・・・


ずんっ


「!」


墓地に差し掛かって間もなく。

え、と思う間もなく、後ろの荷台がやたら重くなった。

まるで人一人分が乗ってるくらいのずいぶんな重さだ。


ペダルが進まない。


(ぬっ、くそっ)


ここで止めたらいけない。

本能がそう脳裏でそう警告をしているような感覚になった。

私は必死にペダルを漕ごうとして、今度は背中の肌を泡立てた。


(ひっ・・・)


背中がぞわぞわとキモチワルイ感覚のもやっとしたのが触れて鳥肌が止まらない。


いや、負けてなるか。

墓地を過ぎて。

墓地を過ぎて。


そうすればきっと。



振り返らない。

これはもう覆らない危機意識でわかっていた。

振り返ったらおそらく大変なことになる。


ずいぶん前に会った知り合いに、幽霊がいると言われたとき、そちらを見てはいけないといわれたこと。

こちらが気づいていると、ついてきてしまうことをきいていた。

だから必死にただ自転車を漕いだ。


墓地の終わりまでもう少し。

寒気は止まらなかったが・・・


墓地を過ぎてしばらくすると、ふっと、荷台が急に軽くなった。


(っだああああ!)


意味不明の心の叫びはあえて口から出るのを防ぎながら、私はそれでもしばらくは街灯のある場所まで立ち漕ぎで自転車を爆走させた。


後でそのことを思い返して、女を捨てて叫んだ思い出ででもある。


さて。

そんな私もついに車に乗るようになったのだが。


車に乗るようになった今、私が注意していることは。


墓地の前、霊山のある場所では必ず窓をまず閉めること。

そういう場所に行く機会がどうしても巡ることがあれば、複数人車に乗車させて、座席をすべて埋めることを心がけようと考えている。


すべては「隙間」に注目されないため。

空いてる空間に、彼らは目ざといのだ。


そうそう、この車にも、実は苦い思い出があったりする。


以前、霊感の強い呼唄というやつが友達だったときのこと。


呼唄と待ち合わせていた場所に、相手を見つけたから手を振ったら、車を降りた後、彼に言われたのだ。


「たくさん乗せてるのに笑って手を振ってるから笑っちゃった」


これも、笑えない思い出の一つだ。


とまぁ、そんなわけで、もし乗り物に霊的存在を乗せてしまったときは。

声をかけてはいけない。

そして、走り続けることだ。


彼らが降りたいところで降りるまで。



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